【いつまでも降り止まない、雨】
行き場のない衝動をこの静かな雨でかき消そうとする。いつまでも降り止まない、雨。起きてからずっと曇りっぱなし、暗い空。それらすべてが仕方ないからというように俺の涙を隠そうとする。
「泣いてんの。」
「気にする必要はないでしょ。」
「必要は、ね。」
察したように、無言で一枚のちり紙を差し出される。求めてはない。湿気で少しだけ湿っている気がするちり紙に喜んでもいいかな。君が泣かせたんだ。振られたわけじゃないけど、振られたみたいなもんだろ。告白されて了解してるところを見たんだから。ずっと、好きだった。
「気づいてなかったでしょ、演技。お願いしたんだ、振り向かせたくて。」
きょとんしている間に口を奪われた。
「これで、気づいてよ。」
みるみると顔が赤くなっていくのを自覚した。
「そろそろ気づいていいかもしれん。なぁ、俺もお前のことずっと好きだった。」
流れるようなお互いの好き。もう一度、唇を奪われた。振り止まない雨が俺たちの熱い体温を必死に隠そうとしていた。
【あの頃の不安だった私へ】
今の私が元気なのか分かりますか、あの頃の不安だった私へ。なんて、一昨日きやがれくらいには意味が分からない書置きっていうか手紙。起きたらこんな手紙が置いてあった。生憎、昨日は珍しくお酒を浴びるほど飲んでしまったので記憶はない。寝る前に何をしていたかとか覚えていない。独りで酒に溺れていたんだ。迷惑はかけていないはずと思ったらこいつ誰。知らないやつか。
「ん? 知らないやつぅ!?」
思わず叫び声をあげたが、その見知らぬ誰かは起きやしない。いや、ありがたいけど。いや、誰だよ。私、何したんだ。てか、こいつ尻尾生えてね?
「ん、誰お前。てか、ここどこ。」
いや、私が知りたい。あの頃の不安だった私へ。なぜかわからないけど私が起きたら目の前に悪魔らしき何かがいたらしいです。
【逃れられない呪縛】
駆けだした、逃れられない呪縛から。飛び出した、自由を求めるために。逃れられないのになんで走っているんだなんて馬鹿な質問。いいじゃん。
「呪いをかけた本人しか解けないなんて、馬鹿みたい。」
【昨日へのさよなら、明日との出会い】
「これで最後だね、さよなら。」
君はその言葉だけを残して消えていった。悲しませない。約束したのに。契った自分に恨みを込めて少し、小指を爪で摘む。赤い糸は重い鎖になって、まとわりついた。
「小指なんて結ぶんじゃなかったや。」
【透明な水】
湧き上がってきた感情は透明な水に似てた。僕の怒りを全て無に変えていく感じ。初めてじゃない、戸惑っただけ。
「やめなよ、母さん。」
怒鳴り声は何回目か。理性が消えていく瞬間はどんな感じか。頭がおかしくなりそうだって兄さんは離れていった。それなら僕は?
「私のこと捨てないわよね?」
A.逃げられないだけだ。