たなか。

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【いつまでも降り止まない、雨】

 行き場のない衝動をこの静かな雨でかき消そうとする。いつまでも降り止まない、雨。起きてからずっと曇りっぱなし、暗い空。それらすべてが仕方ないからというように俺の涙を隠そうとする。
「泣いてんの。」
「気にする必要はないでしょ。」
「必要は、ね。」
 察したように、無言で一枚のちり紙を差し出される。求めてはない。湿気で少しだけ湿っている気がするちり紙に喜んでもいいかな。君が泣かせたんだ。振られたわけじゃないけど、振られたみたいなもんだろ。告白されて了解してるところを見たんだから。ずっと、好きだった。
「気づいてなかったでしょ、演技。お願いしたんだ、振り向かせたくて。」
 きょとんしている間に口を奪われた。
「これで、気づいてよ。」
 みるみると顔が赤くなっていくのを自覚した。
「そろそろ気づいていいかもしれん。なぁ、俺もお前のことずっと好きだった。」
 流れるようなお互いの好き。もう一度、唇を奪われた。振り止まない雨が俺たちの熱い体温を必死に隠そうとしていた。

5/25/2023, 3:24:21 PM