【最悪】
「イエーイ、大成功だな!」
金髪の男は興奮していた。
「早く開けようぜ!」
「ちょっと待てって、落ちつけよ」
革ジャンの男はボストンバッグをテーブルに置きながら金髪をたしなめた。
「だってさー、俺、金塊って漫画でしかみたことねーんだよねー」
「どうせすぐに現金に変えるがな」
長身の男が言った。
「だからだよ、今のうちにしっかり目に焼き付けておかないとねー、じゃ、無垢なる乙女とご対面~」
そう言ってバッグのファスナーを開けた。
「あっこら」
「………」
「どうした?」
「…何これ?」
革ジャンが上から覗き込んだ。
バッグの中は生後数ヶ月の乳幼児が入っていた。
「あ、赤ん坊…かな?」
「無垢なる乙女は?」
「…無垢なる…赤ん坊?」
長身の男は頭を抱えた。
「最悪だ」
【書く練習】
今日は手足が鉛のように重い
仕事に行くか休むか、ギリギリまで迷った
だが結局行ってしまう
休む勇気がほしい
頭はモヤがかかったかのよう
肩が落ち、姿勢も前屈みぎみ
足は重く、一歩踏み出すのも億劫で仕方がない
顔の表情筋は1ミリも動かす気力もない
そんな人間に人など寄り付くわけもなく
仕事中は人と会話らしい会話をしていない
こんなことを書いている自分が嫌いだ
体調不良アピールしてるみたいで
気持ち悪い奴だと思ってしまう
こんな日は、薬をのんで寝てしまうに限る
明日はきっと今日よりは幾分ましだと信じながら
【狭い部屋】
狭小住宅が好きだ
部屋自体が自分を包む膜のようで安心する
手に届く所に何でもあるこの安心感
これが中途半端に狭いといけない
あれが置けない、ここが足りない、そこがぶつかる等と不都合ばかりが目につく
カタツムリやヤドカリの如く
常に家とともに生きていく様に憧憬をいだく
そんなことを考えながら、1LDKの我が家へと帰る
【失恋】
恋に落ちるのは一瞬で
恋が散るのも一瞬だ
【書く練習】
文章を書くのが得意ではありません。
私用でも仕事でもメールなんかはものすごく時間をかけてしまいます。
そのくせ大したことはかけていない気がして、送ったあとは激しく後悔して身悶えしています。
書くことは癒しになるんだとか、何かで読んだ。
癒されたい私は、ならば書こうと思ったが、うまく行かない。
苦手なのだ。
心に浮かんだことをそのまま書きましょうと云うが、
心で思ったことを言葉に変えるのはとても疲れてしまう。
考えすぎると、頭がつまった感じがして目眩と吐き気がやってくる。
いつもそうだ、これのせいで好きだった読書もしなくなり、物事への興味が失せた。
テレビや映画をみても心が動くことが少なくなった。
大人になったのかと思ったが、そうではないと気づいた
前は好きだったものが今は色褪せて興味が持てなくなる。
それを自覚した途端に冷や汗がでた。
自分はなにか大事なものを擦り減らし続けてるのではないかと。
このままでは感情をなくしてしまいそうな気がした。
当然そんなことあるわけないのに。
そんなわけで、この焦燥感を打ち消すべく、何か行動を起こさなければと思った。
無感動に成りつつある自分を留めるために何ができるか?
たどり着いたのが、苦手ながらに文章を書こうと思ったわけだ。
ただ最初に言った通り、書くのは苦手だった。
無理のない範囲で、しかし継続的に。
毎日少しづつでもいいから、なにか文字を書き残しておこうと思った。
昨日で10回も書けたことに気がついた!
まだ癒されることはないが、これが一日でも長く続くように願う。