【狭い部屋】
狭小住宅が好きだ
部屋自体が自分を包む膜のようで安心する
手に届く所に何でもあるこの安心感
これが中途半端に狭いといけない
あれが置けない、ここが足りない、そこがぶつかる等と不都合ばかりが目につく
カタツムリやヤドカリの如く
常に家とともに生きていく様に憧憬をいだく
そんなことを考えながら、1LDKの我が家へと帰る
【失恋】
恋に落ちるのは一瞬で
恋が散るのも一瞬だ
【書く練習】
文章を書くのが得意ではありません。
私用でも仕事でもメールなんかはものすごく時間をかけてしまいます。
そのくせ大したことはかけていない気がして、送ったあとは激しく後悔して身悶えしています。
書くことは癒しになるんだとか、何かで読んだ。
癒されたい私は、ならば書こうと思ったが、うまく行かない。
苦手なのだ。
心に浮かんだことをそのまま書きましょうと云うが、
心で思ったことを言葉に変えるのはとても疲れてしまう。
考えすぎると、頭がつまった感じがして目眩と吐き気がやってくる。
いつもそうだ、これのせいで好きだった読書もしなくなり、物事への興味が失せた。
テレビや映画をみても心が動くことが少なくなった。
大人になったのかと思ったが、そうではないと気づいた
前は好きだったものが今は色褪せて興味が持てなくなる。
それを自覚した途端に冷や汗がでた。
自分はなにか大事なものを擦り減らし続けてるのではないかと。
このままでは感情をなくしてしまいそうな気がした。
当然そんなことあるわけないのに。
そんなわけで、この焦燥感を打ち消すべく、何か行動を起こさなければと思った。
無感動に成りつつある自分を留めるために何ができるか?
たどり着いたのが、苦手ながらに文章を書こうと思ったわけだ。
ただ最初に言った通り、書くのは苦手だった。
無理のない範囲で、しかし継続的に。
毎日少しづつでもいいから、なにか文字を書き残しておこうと思った。
昨日で10回も書けたことに気がついた!
まだ癒されることはないが、これが一日でも長く続くように願う。
【梅雨】
曇りや雨の日が続く
空気が湿気を含み吸う息さえ重かった
肺の中が重くなる
気持ちも沈みがちだ
雨上がりを美しいと言う人もいるが
自分はそうは思えなかった
そこかしこで雨に濡れてベッタリとゴミや植物の葉がへばり付き、なんなら腐ってきている
それを見ていると腐敗が自分に伝染してくるようで吐き気がした
私は曇りや雨が続く季節に生まれたが
この季節が一番嫌いだ
今も死について考えることはないが
この煩わしい季節は私をいつも引きずり込む
【無垢】
ホコリの被ったブラインドからオレンジ色の光が差し込んでいた。
部屋は静まり返り、ホコリが西日でキラキラと舞っていた。
そこへ二人の男が話しながら入ってきた。
黒い革ジャンの男と、金髪の男は紙袋を抱えていた
「遅いぞ」
奥のソファから長身の男が声をかけた
「悪い、買い物に手間取った」
革ジャンが答える
「だってさー限定のチョコバーがあったんだよ買うっきゃねーって」
「わかったから」
金髪が捲し立てるのを革ジャンが止めた
長身の男は苛立ちながら言った。
「いいか、時間厳守だ、守れないようならこの計画から降りて貰うからな」
金髪は慌てて話を変えようとした
「あ、わるかったよー、時間厳守ね、わかってるって、それよりさーいっこ質問があるんだけと、無垢ってどういう意味?」
「煩悩から離れるとか、清らかで汚れのないものとか、かな?無垢なる乙女とか言わないか?」
「あーなんか聞いたことあるかも!うぶな女の子ってことかー、いいよなー女の子の純潔って!」
「お前は煩悩だらけだな」
革ジャンが笑った
「いいじゃん煩悩!人間だからねー綺麗なものだけじゃ生きてけないって」
長身は立ち上がり口をひらいた
「そうだな綺麗事だけじゃ腹も膨れない、そろそろ時間だ、俺たちの無垢を迎えに行こうじゃないか、黄金色の無垢を」
「イエーイ待ってました、待っててねー俺の金無垢ちゃん」