小砂音

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7/25/2023, 3:56:45 PM

#48 鳥かご

美しい曲線
等間隔に並ぶ細い柵
その隙間に小指を差し込んで
触れたがった

彼女は
首を傾げるような仕草をして
無遠慮にトントンと遠ざかる

その様子を見詰めていると
彼女はひどく窮屈で
自由を奪われた象徴のように思われた

しかしその考えもまた
わたしたちのエゴなのだろう

彼女を不自由にしているのは
皮肉なほどに絢爛で精巧な枷ではなく
欲しがりで
支配することに安心するわたしだ

そして彼女を自由にするのもまた
嘲笑うかのように澄み渡った空ではなく
卑しくて
失うことを恐れるわたしだ

7/24/2023, 4:45:29 PM

#47 友情

友だちって
たとえば空のような
そういう類のひとつ同じ屋根の下で
実は一緒に暮らしていたりする
そんな関係性の人を言うのだと思う

知りたい気持ち
知ってこそより好きになる気持ち
そういう感情の存在も解っているけど
わたしは
相手を知りすぎない状態も
同じくらい好きだし
大切にしている

たまに共有する時間に垣間見える
そこはかとない味方感に
心がすっかり
頼りにしてしまうことがある

そういうのがうれしくて
たまらなく好きだ

そしてわたしも
限りなく同等な近しいものを
与えられているのだと自惚れられる
それもまた、うれしい

すこしだけ遠くにいる
わたしの幾人もの友だち
また近々、もしくはちょくちょく
小さな屋根の下でおしゃべりするのだ

それにわくわくする日々こそ
友情を育む日々

6/3/2023, 1:29:17 PM

#46 失恋

失恋したことはない
恋をしたことがないからではなく
両想いを望まないから
理解してもらおうなんて思わない
自分でも理解はできないから

でも恋愛を賛美されたり
失恋で切なさを語られると
たまに「もういいよ」と突き放したくなる

着る笠は死ぬまで無いし
死んだあともできない
冷たい雪に埋もれて
お前は生きていて何が楽しいのか、と
笑えていない眼差しで問われ続けるんだ

今日は
わたしは
怒っている

5/12/2023, 3:44:17 AM

#45 愛を叫ぶ。

愛は叫べない、
言葉じゃないから。
だけど
愛の叫びは聴こえる、
偽物じゃないから。

きみの瞳に、仕草に、やさしさに
静かな愛の叫びを聴いている。

だから
ぼくは安心して、味方になって
囁くように、きみに愛を叫ぶ。

5/10/2023, 5:12:21 AM

#44 忘れられない、いつまでも。

降りしきる眼前の情報
静かな森に閉じ込められた
忘れたくない記憶の淵に
流れ込んできては
様々なものと絡み合って風化させる

あなたは白い掌だ

わたしにそっと触れてきて
石碑の文字を慈しむように
湿った緑の覆いを払ってくれる

涼しく、孤独で、密やかな深淵に
植物を気にしながらも
知りたいという欲望に駆られて
立ち入ってくる

死体は実のところ、どこか
掘り返されたがっているのかもしれない

だからわたしは
安らかに埋葬された記憶を
忘れることができないのだ
いつまでも、ずっと

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