私が1番好きな遊園地は、シックスフラッグス・マジックマウンテン!みんなで行ったよね。絶叫系もびしょ濡れ系も色んなタイプのコースターがあってどれも好き。そんななかでも足プラブラ系の「Ninja」が実は1番お気に入りだった。キャラクターはイマイチだけど、ゲート入ってすぐのところにあるドーナツみたいなパンケーキみたいなパイみたいなフワフワの生地にジャムとホイップと粉砂糖がたっぷり乗っかってるやつ、美味しかったよね。絶対に乗りたくなかったフリーフォールに初めて乗って、もう二度と乗らないって誓った。ホントに怖かった。
サカイはコースターが落ちる度に水しぶきがかかる橋の上で、キャーキャー言いながらワザとびしょ濡れになってたね。よく覚えてるよ。
そういえば、スヌーピーで有名なナッツペリーファームにはサカイが連れて行ってくれたよね。小さな遊園地だけど、名物のジャムはその農場のおばさんがみんなに喜んでもらいたいって提供したのが始まりなんだって教えてくれた。サカイはスヌーピーに出てくるウッドストックがお気に入りだったね。
生まれて初めて運転した車は、タローくんのフォード・マスタング。60年代のシートベルトも無い古い車で可愛くてオシャレな赤いオープンカーだった。どこかの駐車場で何人かでこっそり練習させてもらった。ほんのちょっとだったけど、古い車だからステアリングも重たいし、コントロールが難しくてすごくドキドキしたのを覚えてる。
実際に公道に出て運転したのは、トモヤのISUZUインパルス。夜中の大通りを何度も練習させてもらった。
アメリカは助手席に免許を持っている人が座って、練習をしてから、車を持ち込んで試験を受けるのが普通。試験の費用は当時12ドル。筆記試験は、先に試験を受けた人から試験問題をもらって、3パターンくらい暗記した。
アメリカでの生活に車は必要不可欠。ちゃんと教習もあるし車も借りられるけど、みんななるべく車を買う方にお金を使いたいから、留学生同士助け合ってみんなで免許を取った。
私は少し前に免許を取ったサカイのホルクスワーゲンのゴルフを共同名義にしてもらって、実地試験を受けて合格し、写真を撮ってサインをし、その場で免許証を受け取った。
学校の近くにPenny Laneっていう古着屋さんがあって、ハロウィンの衣装を探しに何度が見に行ったんだけど、なかなかピンとくるものがなくって。結局、天使的なイメージでキラキラしたものを纏うことにした。誰のツテなのか分からないけど、何人かで誰かの家にお邪魔したよね。まだお酒も飲めないし、夜に外を歩き回るわけにもいかないし、ただそこにいる人たちでテキトーにしゃべって終わりだったけど、その時に撮った写真はとても大切な1枚になった。
私をサカイとアツトとケンタが囲んで写ってる写真。
サカイと、アツトと、ケンタ。
私たちが通ってた学校は、カリフォルニアにある私立の割と裕福な家庭の子が通う大学のキャンパスで、校舎や施設も古いものもあったけど、とても立派で素晴らしい環境だった。私は寮生ではなかったから、新しいカフェテリアで食事することはなかったけど、授業が終わった放課後だったのかな、待ち合わせてサカイとテラスの席に向かい合って座った。
晴れてて、心地良い天気で。
座るなり、テーブルに項垂れるようにして右手を伸ばして私の手を掴んで、いきなり息を吐くように、笑って「結婚しよう」って言ったの、覚えてる?
周りには誰もいなかったと思うけど、もうサカイしか見えてなかった。ても、付き合って間もないのに結婚なんて何言ってんだろうって、その時の私には冗談にしか聞こえなくて。あっさり「何言ってんの」くらいにしか返せなかった。高校卒業して半年、19歳になったばかりの私にはとても現実味のない言葉だった。
サカイはまだ18歳だったけどね。
プロポーズのタイミングとしては早すぎたね。
みんなそれなりに野心とか夢とか持ってて、普段はバカやってるのに、意外としっかりしてたよね。
サカイはアメフトが好きで、チームドクターっていうのかな、そういうの勉強したいって言ってたね。
アメフトは親しみなくて、ルールとか有名な選手とか、どんなチームがあるとか何も知らなかったけど、一度、L.A.RAMS(当時)の試合に連れて行ってくれたことがあったね。隣で一生懸命解説してくれて。難しかったけど楽しかったよ。
そんなことがあったから、ローズボウルはテレビでちらっとは観るくらいにはなった。アメリカといえばアメフトだしね。