奇跡をもう一度
人間に奇跡を起こすことなどできない。
奇跡だと思うほどの稀な時にたまたま成功する、人間の仕業だ。
それでも欲しい。
奇跡的な成功を、奇跡的な喜劇を!
ああ、神様。
奇跡をもう一度、起こさせて下さい。
どうやって成功させたのか分からないのです。
たそがれ
何を見るでもなく、ぼんやりと窓の外へ目を向けると枯れた樹木が眼に入り嫌気が差す。
世話はちゃんとしていた。
今年の夏は暑すぎたのだ。
影も用意して、水はたっぷりやったけどだめだった。
どんどん枯れて、葉が焼けて落ちた。
ごめんね。
そう思いながらも枯れ枝を抜くでもなくただ見る。
誰彼が、罪の色に変わるまで。
きっと明日も
明日もいい日になるよね
そんな生き方がしたかった
明日も悪い日
明日もだめな日
きっと明日も、どうしようもない日
静寂に包まれた部屋
夜中。枕元のほのかなライトを頼りにそっとリビングへ向かう。
家族は全員二階で寝ているから、静かに書き物をするには一階が一番なのだ。
茶色のペンを紙に立て、今日の反省とよかったことを書き連ねる。
これが嫌だった、これが嬉しかったと書いているうちに今日という一日が記憶から消えていく。
頭の中でいつまでも反省を反駁するのは悪い癖だ。全部なくしてしまおう。そうしているうちに何があったのかすっかり忘れてしまう。
今日も静かだ。
今を感じることを最後に、眠りにつく。
明日も静かでありますように。
別れ際に
別れようと、素直に言えなかった。
これ以上傷つけたくなかった。
彼の疲れた様子に、これ以上は無理だと悟った。
別れ際には曖昧に微笑んで背を向けた。
四週間をデジタルデトックスに使い、彼を私の依存から解放したあとで感謝と謝罪を入れて、それっきり。
これ以上何か言えただろうか。
こんなに迷惑ばかりかけた私は。