Riverrun

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10/29/2023, 2:38:38 PM

蝶は羽が濡れていて飛べなかった。必死にもがいても脚が絡まるばかりで進めない。蝶は焦っていた。もうじき雀が来てしまうだろうから。
蝶は飛ぶことを諦めた。生を諦めたのでは無い。歩き出したのだ。
するとたちまち羽は乾き、再び飛翔することが出来た。
その姿は栩栩然として胡蝶そのものである。

自分が何者であるかなんて知らなかった。飛ぶことが全てで、それで満足していた。

突然目が覚めた。鏡に映る姿は紛れもない自分自身だ。
蝶になった夢を私が見ていたのか、蝶が私になった夢を見ているのか……
飛べない蝶はどこに行けるというのだろう。太陽の眩いばかりの輝きに向かえなくても、地面に残された温かさに気づく事が出来たなら、辛く地道な1歩も心地よい道程に思えるのかもしれない。

10/28/2023, 11:49:06 AM

こんな随筆を読んだ。

私の少年時代には《蠟燭の時期》とでもいうべき時代があり、深夜、電灯を消した闇のなかで小さな蠟燭をつけ、そのゆらめく黄色い焔を顔の下からあてながら鏡を覗くと、思いがけぬ深い陰翳にくまどられた《自分の顔》のなかから思いもよらぬ種類の《他のかたちの自分》の邪悪な顔がいわば見知らぬ遠い宇宙人のごとくに現れてくる奇怪な啓示に、その時代の私は飽きることなく耽っていたことがあるのであった。私はつねづね闇のなかの鏡は、それ自体すでに《魔の道具》であると思っていたけれども、闇のなかの小さな蠟燭の黄色い焔が私達の隠れた本性をおぼろに照らしだす別の種類の魔の道具であることにも尽きせぬ不思議な深い魅惑を覚えたのであった。


作者は埴谷雄高、随筆の読解は難しい。
難しいけど志望校が出題してくるからしょうがない。少なくともこの18年生きてきて私にはロウソクの時期なんてものは無かった。そしてもう世間は、私が少年少女でいることを許してくれない。
無い経験に自己を没入させるのはちょっと大変だからか、やっぱり平均点は低かった。
これは前回の冠模試で出た問題だ。明日が2回目の冠なのを考えるとベストタイミングなので驚いた。
本来は教科書に向かうべき時間だけど、おかげで1回目の問題冊子を振り返ることが出来たので有意義だったとそう思うことにする。

この文章に強く惹かれてしまったのは、作者の表現力なのか、独特の雰囲気からなのか……
こういう文章を、いつか書けるようになれたらなと、強く願う。

10/27/2023, 4:40:36 PM

紅茶の香りがすると罪悪感を覚える。私が目を背け続けてる仕事。
母が父と離婚してから2年くらいは私も作っていたけど、いつの間にか母ひとりが作っている。受験勉強を盾にしているのを申し訳なく思う。
たまにはやらなきゃ愛想もつかされるかなと思いはするものの、身体が動かない。思考だけは元気だ。
そんな受験にも1度、失敗している。今は浪人生のこの身だ。
最早なんのティーパックを使っているかも分からない。冷蔵庫を開けてコップに注いで、口に含んでやっと理解する。
今日はアールグレイかな。
Liptonのアールグレイはレギュラーだもんね。
記憶を辿る度に悲しくなるのはなんでだろう。浪人生になって格段に心が弱くなってる気がする。
世界で取り残されてる焦りと、自分への失望。
今だって、何も出来ない不器用さを突きつけられて泣いていた。
身体だけ無駄に成長して、心は幼稚園児のままみたい。
こんなんじゃやってけないってわかってる。
明日はオープンだから、もう、歯を磨いて寝よう。
どうか夢だけでもなりたい自分になれますように。