Riverrun

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こんな随筆を読んだ。

私の少年時代には《蠟燭の時期》とでもいうべき時代があり、深夜、電灯を消した闇のなかで小さな蠟燭をつけ、そのゆらめく黄色い焔を顔の下からあてながら鏡を覗くと、思いがけぬ深い陰翳にくまどられた《自分の顔》のなかから思いもよらぬ種類の《他のかたちの自分》の邪悪な顔がいわば見知らぬ遠い宇宙人のごとくに現れてくる奇怪な啓示に、その時代の私は飽きることなく耽っていたことがあるのであった。私はつねづね闇のなかの鏡は、それ自体すでに《魔の道具》であると思っていたけれども、闇のなかの小さな蠟燭の黄色い焔が私達の隠れた本性をおぼろに照らしだす別の種類の魔の道具であることにも尽きせぬ不思議な深い魅惑を覚えたのであった。


作者は埴谷雄高、随筆の読解は難しい。
難しいけど志望校が出題してくるからしょうがない。少なくともこの18年生きてきて私にはロウソクの時期なんてものは無かった。そしてもう世間は、私が少年少女でいることを許してくれない。
無い経験に自己を没入させるのはちょっと大変だからか、やっぱり平均点は低かった。
これは前回の冠模試で出た問題だ。明日が2回目の冠なのを考えるとベストタイミングなので驚いた。
本来は教科書に向かうべき時間だけど、おかげで1回目の問題冊子を振り返ることが出来たので有意義だったとそう思うことにする。

この文章に強く惹かれてしまったのは、作者の表現力なのか、独特の雰囲気からなのか……
こういう文章を、いつか書けるようになれたらなと、強く願う。

10/28/2023, 11:49:06 AM