Riverrun

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蝶は羽が濡れていて飛べなかった。必死にもがいても脚が絡まるばかりで進めない。蝶は焦っていた。もうじき雀が来てしまうだろうから。
蝶は飛ぶことを諦めた。生を諦めたのでは無い。歩き出したのだ。
するとたちまち羽は乾き、再び飛翔することが出来た。
その姿は栩栩然として胡蝶そのものである。

自分が何者であるかなんて知らなかった。飛ぶことが全てで、それで満足していた。

突然目が覚めた。鏡に映る姿は紛れもない自分自身だ。
蝶になった夢を私が見ていたのか、蝶が私になった夢を見ているのか……
飛べない蝶はどこに行けるというのだろう。太陽の眩いばかりの輝きに向かえなくても、地面に残された温かさに気づく事が出来たなら、辛く地道な1歩も心地よい道程に思えるのかもしれない。

10/29/2023, 2:38:38 PM