「透明」
透明は、うつくしい。
波も、プリズムも、雨粒も。
あなたの瞳も、全てがうつくしい。
透明は、世界を彩る。
水の反映、ひかり、虹。
透明に呼応した世界は、やがて自分の色を持つ。
色を持つあなたはうつくしい。
黒い髪。青い瞳。陶器のような肌。
透明によって照らされた世界も、やがて自身を彩る。
色を持たない私は、透明のまま。
光と影が、からだを渦巻く。
色が遠ざかっていく。
それでも私は構わない。
私が私の世界を彩ればいいのだから。
うつくしい透明で、うつくしい世界を描く。
色がなくても、大丈夫。
透明な世界の中で、透明に生きる。
なんと素敵なことでしょう。
「終わり、また始まる。」
夢を見ていた。長い長い、夢を見ていた。
体は水底に沈み、あたりも暗くなっていく。
光は遠ざかって、闇が体を包む。
なんだか心地よい。
私はどこまでも、どこまでも沈んでいく。
どこまでいくのだろうか。
真っ暗闇まで、行けるのだろうか。
黒い静けさに身を委ねていたら、突然光に引き戻された。
今度は、自分の足で立って、行き先も自分で決めろと、そう言われた気がした。
闇の時間は終わり、そして、光に満ちた夢が始まる。
今度はどこまで行けるかな。
「星」
わたし なれたよ あなたのための星に
もう そばにはいられないけれど 見上げたら そこにいるの
わたしが 星が
ねむれないとき 孤独なとき じぶんのきもちに ふたをせず
みあげてほしい こっちをみてほしい
わたしを みてほしい
廻るわたしは いつかチカラをもって
あなたにキセキを あなたにアイを 永遠に
どうかあなたも 私のための 星でいてね
「願いが1つ叶うならば」
「ニンゲンしゃん!」「?」「ボク、よーしぇーしゃんになりましゅ!」「いきなり何があった」「あのねー、えほんにねー、おねがいかなえてくれるよーしぇーしゃんがいてねー!」
嬉しそうに話してる。自分は横でうんうん頷く。
「だからねー!ボク、ニンゲンしゃんのおねがいかなえるの!」
「ありがとう。」「おねがいかなえてからありがとっていって!」
「はいはい。じゃあ、妖精さんはどんなお願いを叶えてくれるのかな?」「えとねー。」
「どんなおねがいあるのー?」
「何もせずダラダラしたい。」
「えー?!だらだらがおねがい?」「うん。」
「わかった!いっちょにだらだらちよっか!」
「だらだら〜」「……。」
「これ、たのちい?」「楽しいとかっていうよりも、気持ちいい、かな。」「へー。」
「何もしない」っていうのは、意外と開放感があっていい。
ダラダラすることで疲れるわけじゃないし、何が減るわけでもないから、たまにはこういうのもいいな。
「妖精さん。」「はーい!」「妖精さんは、もし願いがひとつ叶うとしたら、どんなことを願うの?」「んー……。」
カーペットに寝転びながら考え中らしい。
「おちごと。」「?」「⬛︎⬛︎ちゃんと、おとーしゃんといっちょにおちごとちたかった。」「……仕事したかったんだ。」「ん。」
「だってねー、ボク、おちごとのために、うまれてきたんだよー?」「あちょねー、⬛︎⬛︎ちゃんもおとーしゃんも、おちごとたのちちょーなの!」「だから、おちごとちたい!」
「……大丈夫、いつかきっと叶うよ。」「ほんと?!」「自分はそう思う。」「んー!」嬉しそうに顔を埋めてきた。かわいい。
「ボク、みんなのためにいぱーいがんばるからね!」
純粋無垢な子どもの、とても優しい願い。
この願いが叶うのを、自分も見守れたらいいな。
そう思いながら、自分はこの子の頭を撫でた。
「嗚呼」
嗚呼、神様。
どうしてあなたは私を創り出したの?
私は徒花。間違って生まれてきた花。
私は不協和音。生まれるはずのなかった音。
私は影。光に照らされたら消えてしまう儚い影。
嗚呼、神様。
どうしてあなたは私を創り出したの?
私はどこにもはまらないパズルのピース。
存在意義も、居場所もない、パズルのピース。
だれも欲しがらない。帰る場所もない。
なのに、私は生まれた。
生まれてしまった。
闇から光に突き落とされてしまった。
こんなに明るい場所じゃ、私は生きられないよ。
嗚呼、どうして?