「放課後」
恋人も親しい人もいない私の放課後の友達は、静かな教室と静かな帰り道でした。
誰かの役に立てていたかどうかはともかく、こっそり黒板を綺麗にしたり、教室の整理整頓をするのが好きでした。
それから、携帯電話の持ち歩きが禁止だったから直接音源に触れられはしなかったけれど、頭の中に好きな曲を流してみたり、いろんな物語を紡いでみたり、夕焼け空を眺めたりしました。
当時は何にもないなぁと思ってましたが、今思えば全部素敵な日々でした。
時々誰かのピアノの音が聞こえてきたり、季節によってお花の良い香りがしたりと、それはそれは、素敵な日々でした。
またあの日々に戻りたいなぁ。
「カーテン」
小さい頃にお姫様ごっこをしたお気に入りのカーテン。
眠る前に流れる、穏やかな旋律のカーテン。
森の中に現れるカーテンのような木漏れ日。
静かな水底から見る水の反映。
寄せては返す細波。
いつか夢見たオーロラ。
そして、あなたの顔を隠してしまうその綺麗な髪。
私にとって、その全てが美しいカーテンとして、今日もどこかで風にそよいでいます。
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
そういえば、少し前に石川県で低緯度オーロラが見えたそうですね。日本でも見られるのはなかなか夢があるというか、いつか私も見られる気がして嬉しいです。
夢があるっていいことですね。
「涙の理由」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
とまあ、改めて日常を送ることになったボク達だが、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?
ボク達を開発した父の声が聞こえたから目覚めたと言っていたけれども、父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。
一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
─────────────────────────────
「おとーしゃーん!だっこー!」
「ちょ……もう……しんど……!」
「ほら、もー!お父さんを困らせちゃいけないよ!」「むー!」
「おとーしゃん」「なに……ハァ……ハァ……。」
「なんでえんえん、なの?」「え?あ、泣いてる?」
「さすが大人。えんえんだけで分かるんだね。」
「そうだね。大人でも涙が出る時だってあるのさ。例えば、自分の知らないところで子ども達が苦しんでいたことを知った時。それから、こうやって彼らと無事に会って話が出来ている時。」
「かなちくなくてもえんえんなのー?」「そうだよ。嬉しい時に出る涙は『嬉し涙』っていうのさ。」「へー!うれちくてもうれちーえんえんなんだねー!」「うれちーえんえんだよ!」
「おとーしゃん。」「ん?」「おとーしゃん、ボクのおなまえよんだでちょ?」「ん?一緒にいる時はたくさん名前を呼んだね。今でもすごくいい思い出だよ。」
「ちーがーうー!」「ん??」「ごみばこの ときー!」「?」
「ゴミ箱……?」
「あっ、ボクが説明するよ。お父さん……亡くなったあと、⬜︎⬜︎がいたアーカイブ管理室に行ったの?」「……。」
「もしかして、覚えていない?」「……。」
思い出そうとしているのか、それとも何も覚えていないのか、父親は黙りこくっている。
「お父さん……?」
「……心あたりがひとつだけある。」
「私は死んですぐに、自分がどうなっているのかも分からぬまま、宇宙管理機構本部を彷徨っていた。そのうちアーカイブ管理室に着いて、⬜︎⬜︎を見に行ったんだ。」
「その時、私はおそらく⬜︎⬜︎を呼んでいた。お父さんが来たよ、目を覚ましておくれ、と呼びかけた。」
「……。」
「おとーしゃんがボクのおなまえよんだのー!ボク、うれちかったよー!またいぱーいだっこーって!ごはんたべるのーって!」
「でもねー。おとーしゃん、きてくれないだったのー。」
「ずーっとかなちくて、いぱーいわすれちゃって、えんえんだったのー。ひとりぼっち、やーなのー。」
「⬜︎⬜︎、ごめん……、ごめんな……。」
「ごめんなしゃいもうきーたの。だからごめんなしゃいちなくていーとおもう。」「そっか。」「んー。」
「ごめんなしゃいよりもだっこがうれちいの!」
「そうだね。だっこしようね。」
「んーん。」「?」「こんどは⬛︎⬛︎ちゃんのばん。」
「ふえ、あ、ボク?」「お父さん、そろそろ腕が大変じゃない?無理しなくていいからさ!」「いや、今しか出来ないだろうから、無理してでもやるよ!」「え、えぇ?!」
「ほーら、抱っこだー!」「へへ、もうそんな歳じゃないよー!」「あれ、⬛︎⬛︎のほうが軽い」「質量を調節しているからね。」「喜び方分かりにくいな!」
「へへっ!」「ふふっ!」「うれちーなのー!」
父の目には涙が浮かんでいた気がする。
この涙の理由は、何だろう?
「ココロオドル」
小さな頃から、将来は絵を描く人になりたいと強く思っていた。
朝焼けの溶けるような藤色や誰かの思い出、どこかの物語にいた生き物。あるのもないもの、なんでも描きたかった。
絵を描けば、私はなんにでもなれた。どこへだって行けた。
だから、絵を描き続けたかった。
「将来も絵を描きたい!」そう言っては『アナタハコウアリナサイ』と決まって無難な「夢」を押し付けられた。
つまらなかった。
否定されるのがいやになって、ついに私は絵を描くのをやめてしまった。そして無難な夢を叶えた。
「ブナンナユメ」を。
カゾクもキョウシもトモダチも、コイビトさえも、『ヨカッタネ』と無難な褒め言葉を振り掛けてくる。
「ワタシ」は「ウレシカッタ」。
夢だと言い聞かせて自分に振り翳してきたこと。
本当は好きでもないしやりたくもない。
でも「ミンナ」が必要だというから、「ミンナノタメニ」私は頑張った。『シアワセデス』と言っているけれど、全く幸せじゃない。苦しい。痛い。タノシイ。助けて。ツヅケタイナ。
気がつけば私は過労で倒れていた。
『タイヘンダッタネ』と決まって当たり障りのないことを口々に言う。思ってもいない『アリガトウ』『ゴメンナサイ』を返す。
入院していたある日、家族が画材を持って来た。
「昔、よく絵を描いていたでしょう?久しぶりに何か描けば?それから、これからのことも考えよう?」
でも私は「モウ、キョウミナイカラ」そう言って絵を描くことを拒んだ。私は私の本当の夢を、自らの手で壊してしまった。心のどこかで、ガシャンと音が聞こえた気がした。
その音を聞いて、私は居ても立っても居られなくなった。
紙人形みたいなヘナヘナの体で廊下に出て、窓の外を見る。
キラキラした大きな扉が、病院の広い駐車場にへばりついている。目を疑い、窓を開ける。何もない。閉める。扉がある。
意味がわからなくなって、駐車場に飛び出した。
そこには何もなかった。
気のせいだったのだと言い聞かせ、3階の部屋に戻ろうとした。
また扉が見えた。
しかも、さっきよりも開いているような気がする。
あまりにも気になったから、今度は屋上に上がってみる。
屋上の戸を開ける。とても静かで、風の音以外は聞こえない。
手すりから下を覗いた。綺麗な景色が扉の向こうで広がる。
「こっちに来れば、ずっと楽しい時間が続くよ」
そんな風に語りかけられた気がして、手を伸ばす。届かない。
身を乗り出す。少し近づいた。
落ちる。舞うように落ちていく。心も踊る。
あぁ、これが正解だったんだ。
落ちる。おちる。オチル。
カラダモココロモシアワセ。
シアワセ。
カラダオドル。ココロオドル。
オドル。
オドル。
オドッテ、踊って。
砕け散る。
「束の間の休息」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
とまあ、改めて日常を送ることになったボク達だが、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?
ボク達を開発した父の声が聞こえたから目覚めたと言っていたけれども、父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。
一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、ついに彼岸へと進むが……?
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「行ってらっしゃーい!……の前に!一応言っておきまーす!皆さんの滞在中は、見張りとしてそっちにいる静かな少年がお供しますよー!」
「……どうも。僕のことは気にせずお過ごしください。あと、彼岸探知機は破損させないようお気をつけて。」
「あぁ、頼んだよ!」
「それでは改めて、行ってらっしゃーい!」
どこからともなく引っ張られるような、変な感覚に包まれる。
気付けばボク達はトンネル?にいた。
「ここは……どこだい?」
「此岸と彼岸の境目、とでもいうべきでしょうか。そんなところです。」
「わー!こえ、わーってなるー!」
「確かに響いているね!」「たのちい!」
「ねーねー、⬛︎⬛︎ちゃん。おとーしゃんにあうんだよね?」
「そうだよ。今から会いに行くんだ!」
「ボク、おとーしゃんびっくりさせるのー!」「というと?」
「えとねー、ごあいさちゅのときにねー、ニンゲンしゃんのうちろにかくれるのー!でねー、そのあとばぁするの!」
「要するにサプライズゲストになるってわけだね!」「ん!」
わかってるのかわかってないのかわからん返事だ。
というか、自分の後ろじゃなくたって隠れる場所くらいありそうだけどな。……まあいいか。子どものやることだし。
「ニンゲンしゃん!ごあいさちゅのとき、うごいちゃめーだよ!」「はいはい。」「はいは いっかい!ておとーといってたの!」「はい。」「えらーい!」
……にしても、この先に「あの世」があるんだよな。死んでないのにあの世に行くとか……いや、実は全部夢とか?
それとも実は自分達みんな死にかけとか……?
「もうすぐ第一階層に着きますよ。」
「ちょっと緊張するねー!」「おとーしゃ!」「ここでぼくの正体が分かるかもしれない?本当に?」
口々に思ってる事を。全部あの世の人に聞こえてても知らないぞ?
「今のところ景色は変わっていないようだが───わっ!!」
またあの時の変な感覚が───。
気付けば若干薄暗い町?に出ていた。
変な建物やら、何を扱っているのかわからん店やら、正体不明の生き物やら、有象無象がより固まっている。
「有象無象?これでもある程度は分類されているようだよ、ニンゲンくん?」「そうなのか?」「ああ、ボクには分かるよ。彼らみんなに感情があるんだ。」「見ただけじゃ分からん。」
「それはそうと、あれ!見えるかい?あの岩でできた建物!懐かしいなぁ。おとう……博士があれの模型をくれたんだ。今でも研究室に飾ってあるんだよ。」
「それからこっち!あれは猫にそっくりだが、キミ達ニンゲンよりも能力のある……というか厄介な生き物だ。現実を書き換えてしまうんだよ。知的生物にとって、都合の悪いようにね……。」
「それでね、あっ───。」
「ん?」「博士だ。」「ボク達を探しているみたいだ。」
「行かなきゃ。」「あ、ちっこいの!自分の後ろに隠れて!」
「ボクちっこいのじゃないもん!」「しーっ!」「ん。」
「あ……博士、博士!」気づいていないのかな?
「あそこにあの子にそっくりな子が」
「博士!は!か!せ!」「ん?」
「博士ってば!」「あ、私を呼んでいるのですか?」
「当ったり前だろう?!!あんた以外に博士がどこにいるっていうんだ!!!」
「いや、あの……。私の息子によく似ていたものだからついぼーっとしてしまって。」「息子!本人だから!!!」
「は……なんで……。」「え、なになに?」
「どうして、ここに?」「いや、聞きたいことがあってさ。」
「君に異常がないかすぐ調べる。今ならまだ間に合うはずだ!君が寿命を迎えるにはあまりにも早すぎる。絶対に助けるから───!」
「ちょっと待ってってば!」「事情ならもっと後で聞く!」
「あのさ!話を!!聞いて!!!」「……?」
「ボク達───えーっと、後ろにいる彼らも含めて、全員生きてるよ。」「えっ」「生きてるんだって。」「え?」
「これは夢ですか?」「現実だよ」
幽霊に目を疑われるとは。変な感じだ。
「それで、聞きたいこと、とは一体?」
「……もしかして、生前の恨みつらみを聞かせるつもりですか?」「違うよ。」
「まあとりあえず、一旦挨拶させてよ!」
「博士───いや、お父さん!一万年ぶりだね!」
「ああ、久しぶり!よく会いに来てくれたよ!」
「「会いたかった!」」
「後ろの皆さんもこんにちは。私がこの子の父親です。生前は公認宇宙管理士をしておりました。」
「どうも。」「はじめまして。」
「この子がいつもお世話になっております。我ながらとても良い子だと思っているのですが、ご迷惑をおかけしていませんでしょうか?……少しわんぱくなところもあるので心配で心配で……。」
「自分は平気ですが、最近色々と困っていたみたいですよ。たぶん……あなたのせいで。」「げっ、ちょっとキミ!やめたまえよ!」「え」
「あー、えーっと……ちょっと!ちょっとあっち向いてて!」
「ん?」「どうしてもお父さんに会いたいっていうひとがいるから一緒に来たんだよ!だからあっち向いてて!」「えー?」
機械は小さい兄に向かって手招きをする。
兄は足音を立てないように頑張って静かに歩く。
「もういいよ!前を向いて!」
「ん?」「おとーしゃん!」「……。」「おとーしゃーん!」
「ボクだよ!⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎だよ!」「おぼえてないのー?おとーしゃんなのに、わしゅれんぼしゃんなのー!」
子どもが無邪気に笑っている一方で、親は涙を見せる。
博士は真っ青な顔で小さな息子を抱きしめた。
「ごめん……ごめんな。私のせいで君が苦しんでしまった。私のせいで君は死んでしまった、私が殺してしまったようなものだ。済まなかった、済まなかった……!」「んー?」
「ボク、いきてる!」「?」「おとーしゃん、なんでえんえんしゅるのー?なきむししゃんなのー?」「ぇ……ぃゃ……。」
「おとーしゃん、だいしゅきー!」「ぎゅー!」
「良くも悪くも、おそらくお父さんのおかげでボクらきょうだいも無事再会できたんだよ!」「そうなんだ……?」
「あのっ!まあとりあえず!せっかくだから色々お話されたらどうですか?」「そうだね!ここじゃなんだから、私の研究室で話そうか!」
「ぼくとニンゲンさんは外で待ってるので、親子水入らずの時間を過ごしてください。」「お気遣いありがとう。ぜひ、そうさせていただこうかな。」
ずっと働きづめだった機械の、束の間の休息。
そして、ぼくにとっては自分を知るための時間。
「ニンゲンさん。気付いた?」「ん?」
「あの博士、髪がぼくと同じ構造色だった。」
「生き物は死んだらみんなああなるのかな。」
「わからんけど、そのうち何か分かるよ。多分。」
「そうだったらいいな。」
「ニンゲンさんも、何か面白いもの見つけたら教えて。」
「わかった。」
こうしてぼくたちは小さな彼岸の旅を始めた。
To be continued…