「またね」
そう言ったのに。
いつものように、話していた。
今日はどんな楽しい話をしようか?
少年みたいな声で、わははと笑う。
つられて私も笑う。
けれど今日はなんだか、センチメンタルな彼の言葉が心をざわつかせる。
どうしたの?と聞いたのに、ごめんねと言われた。
それでも彼は「またね」って、
そう言ったのに。
SNSの投稿は、楽しいものだけ残している。
少しの毒は、次の日には消す。歌と、ご飯と猫だけのアルバム。
今日も昨日の毒を消していく。
今日はご飯と猫も消してみる。
明日もきっと毒を吐く。
美味しいご飯も載せるかもしれない。
次の日には美味しいご飯しか残さない。
みんな気づかない。
今日も私はだれかと笑っている。
『何でもないフリ』
わらわらと、群がる、笑笑と
ぷすりぷすりと、氷のつぶてがわたしを貫く
穴の空いた心、静かに凍ってゆく、こころ
ゆっくり固まり埋まってゆく、いつしかガラス細工の綺麗な心
ぱちん
目の前でシャボン玉が割れた
うららかな日差し、午後
ふぅっと、石鹸を吹く君
にこにこと、駆け寄る、わらわらと
『夢と現実』
冬になったら、
リンゴを煮つめて、パンにのせて、
はちみつをかけて、シナモンをふりかけて、
暖かい部屋で、温かいチャイティー飲みながら、
本を読んで過ごしたいの
『冬になったら』
家に帰ると、門の横から頭を垂れている
さわさわと、風に揺られて上下する
おかえり──
おかえり───
おかえりなさい───。
ふふふ、ただいま。
『すすき』
黄金色に揺れる足元 ほんの少しずつ確かに冷たくなる空気
塵を含まず、澄みわたる空はどこまでも広くて
淡い青色のような、沈みかける太陽に反射してほんのり茜さす東
夕日に焼けて赤く照らされるそのすぐ上に、じんわりと夕闇が広がる西
つい数分前に見た東の空は、いつの間にか深い藍色のベールに包まれていた
それはわたしの脳裏に焼き付いてる、秋の狭間の時間
『脳裏』