『柔らかい雨』
またか、、、
あぁ、うんざりする
どうせ、意味ないんだよ
ため息と、ねっとりした残響が
口から溢れ、再び肺に取り込まれてく
頭は火照り始めた
ゲームみたいに、経験値が数値化されて
決められた値に達すると
進化したり、新しい技や能力を手に入れたりと
それらが保証されていたとしたら、
私はもっと
努力できたりするのかな
どうだろうか
“普通”という架空のカタログをめくっては、
羨望、渇望、嫉妬、憎悪、絶望、無気力のゴンドラを
ジェットコースターのように疾走する
カタログのページからは、自分の未来を
選び取れそうにない私は、自分自身に
欠陥品と、そっと烙印を押していた
ふと気がつくと、頬に何かがつたう
次第に、手にしていたカタログは濡れ始め
雨は、ページを滲ませて
写真はだんだん、ぼやけてく
震える手で、皺皺になったカタログを握りしめた
雨は 柔らかかった
まるで 傷ついた人に寄り添うかのごとく
しとしとと、降り続く
火照った頭を冷やしてくれた
濡れてグチャグチャになったカタログを見つめ、
このカタログの価値を考え直す
乾いたら、きっとバリバリになって
歪な形に仕上がるであろうこのカタログは
いつの日かのために取っておこう
ジェットコースターに振り回された日々と
柔らかい雨がこの身に降り注いだことを
忘れないため、思い出せるように
『心の灯火』
『誇らしさ』
『夜の海』
月が煌めく
波がざわめく
星がまたたく
きらきらと
夜の海を前にすると
なぜだか 素直になれる気がする
闇の中で 月と星の光、波の光と音だけが存在する
自然と 私はわたしと向き合うことになる
太古の昔 わたしの祖先の生命は
この海から 始まったらしい
だからなのだろうか
波の音には 懐かしさとは また違う
とても 居心地の良さを感じる
暗闇のもと、白い光と静寂の中で
私はわたしをそっとみつめる
なにが正しい人生なの
なにが幸せな人生なの
カタログの中にある幸せばかりを追い求めて
自分がなにを欲しているのか
どんどん わからなくなるばかり
人に答えを求めてばかり
人に答えはこれだよ、と言われなければ
動けない
仮に答えをもらったら
本当に幸せになれるのだろうか
なにが幸せかわからぬまま
カタログのページを めくっては
私には 手に入らないと嘆き 悲しみ
時に 怒りさえ感じる
でも 違うよ
カタログに固執してるのは
私自身なんだ
カタログを捨てる自由もあるんだよ
カタログの中にはない“なにか”も あるんだよ
夜の海を目の前にしていると
カタログ熱が冷めていく
吸い込まれそうな暗闇と
そっとやさしく
見守ってくれているような 光があるだけ
どんな生命も 最後はここに戻ってくる
そんな気がする
『窓越しに見えるのは』
虚な目で 天井を見上げる
差し込んだ光に いざなわれる様に
窓辺に視線を移す
窓越しに 私は見つめる
眩しい光は 私の未来
だったら良いのにと、、、
光を拒絶するかの如く
目を瞑る
真っ暗な世界
そこに また光を見出すかのように
想像する
暗闇の中に 灯る光を
眩しさに顔を歪ませながら 恐る恐る
再び 目を開いてみる
本当は光を求めているんだ
だけど、同時に拒絶してしまう
おかしいよね
だけど、この2つが
今の私の真実
生きるために眠るのか
眠るために生きるのか
求めるのものは
渇望か
安穏か
矛盾している私の目に映る
窓越しに見えるのは
おそらく
絶えず せめぎ合う 葛藤かもしれない