『柔らかい雨』
またか、、、
あぁ、うんざりする
どうせ、意味ないんだよ
ため息と、ねっとりした残響が
口から溢れ、再び肺に取り込まれてく
頭は火照り始めた
ゲームみたいに、経験値が数値化されて
決められた値に達すると
進化したり、新しい技や能力を手に入れたりと
それらが保証されていたとしたら、
私はもっと
努力できたりするのかな
どうだろうか
“普通”という架空のカタログをめくっては、
羨望、渇望、嫉妬、憎悪、絶望、無気力のゴンドラを
ジェットコースターのように疾走する
カタログのページからは、自分の未来を
選び取れそうにない私は、自分自身に
欠陥品と、そっと烙印を押していた
ふと気がつくと、頬に何かがつたう
次第に、手にしていたカタログは濡れ始め
雨は、ページを滲ませて
写真はだんだん、ぼやけてく
震える手で、皺皺になったカタログを握りしめた
雨は 柔らかかった
まるで 傷ついた人に寄り添うかのごとく
しとしとと、降り続く
火照った頭を冷やしてくれた
濡れてグチャグチャになったカタログを見つめ、
このカタログの価値を考え直す
乾いたら、きっとバリバリになって
歪な形に仕上がるであろうこのカタログは
いつの日かのために取っておこう
ジェットコースターに振り回された日々と
柔らかい雨がこの身に降り注いだことを
忘れないため、思い出せるように
11/6/2024, 8:59:48 PM