『夜の海』
月が煌めく
波がざわめく
星がまたたく
きらきらと
夜の海を前にすると
なぜだか 素直になれる気がする
闇の中で 月と星の光、波の光と音だけが存在する
自然と 私はわたしと向き合うことになる
太古の昔 わたしの祖先の生命は
この海から 始まったらしい
だからなのだろうか
波の音には 懐かしさとは また違う
とても 居心地の良さを感じる
暗闇のもと、白い光と静寂の中で
私はわたしをそっとみつめる
なにが正しい人生なの
なにが幸せな人生なの
カタログの中にある幸せばかりを追い求めて
自分がなにを欲しているのか
どんどん わからなくなるばかり
人に答えを求めてばかり
人に答えはこれだよ、と言われなければ
動けない
仮に答えをもらったら
本当に幸せになれるのだろうか
なにが幸せかわからぬまま
カタログのページを めくっては
私には 手に入らないと嘆き 悲しみ
時に 怒りさえ感じる
でも 違うよ
カタログに固執してるのは
私自身なんだ
カタログを捨てる自由もあるんだよ
カタログの中にはない“なにか”も あるんだよ
夜の海を目の前にしていると
カタログ熱が冷めていく
吸い込まれそうな暗闇と
そっとやさしく
見守ってくれているような 光があるだけ
どんな生命も 最後はここに戻ってくる
そんな気がする
『窓越しに見えるのは』
虚な目で 天井を見上げる
差し込んだ光に いざなわれる様に
窓辺に視線を移す
窓越しに 私は見つめる
眩しい光は 私の未来
だったら良いのにと、、、
光を拒絶するかの如く
目を瞑る
真っ暗な世界
そこに また光を見出すかのように
想像する
暗闇の中に 灯る光を
眩しさに顔を歪ませながら 恐る恐る
再び 目を開いてみる
本当は光を求めているんだ
だけど、同時に拒絶してしまう
おかしいよね
だけど、この2つが
今の私の真実
生きるために眠るのか
眠るために生きるのか
求めるのものは
渇望か
安穏か
矛盾している私の目に映る
窓越しに見えるのは
おそらく
絶えず せめぎ合う 葛藤かもしれない
『恋物語』
心の中にその顔を思い描くだけで 元気が出る
まるで心の中で 花火が舞ってるみたいに
その人の声を 心の中で再生すると
あたたかくて 雲の上を歩くような
ふわふわした 気持ちになる
だけど 会う前はものすごく息苦しくて
いざ話そうとすると 頭の中はまっしろで
思ったように言葉は出てこなくて
まるで 錆びついて 動きにくくなった
ブリキのおもちゃみたい
私の感情は かくれんぼでもしてるのか
どんなに呼んでも 出てこない
その人が 目の前からいなくなって
やっと 感情は戻ってくる おかえり
なんでだろうね
『耳を澄ますと』
耳を澄ますと
何が聞こえる?
貝殻に耳を当てて
じっと音を聞き取るように
静かな静かな
深い深い
心の奥の
その声を
耳を澄まして
聞いてごらん
日常の喧騒
日々の雑音
生活の波風
それらのノイズに掻き消され
耳を澄ますこと それ自体
忘れてしまっている
だけど
耳を澄ますと
たしかに聞こえる
大事な
大事な
心の奥の真実の声
一日の中で
ほんの少し、5分でもいいから
ただ、ただ 静けさの中に
自分を置いて
心の中で
ノイズに掻き消された声たちに
耳を澄まして
聞いてみよう
心の声の中にしか
本当の喜びも
充実感も
きっと 見つかりはしないのだから