『真夏の記憶』
「たしか……このあたり!」
こんな場所
来たことないはずなのに
この子はまるで
1度来たことがあるかのように
さっさとここまで来てしまった―――
―――
「手紙を取りに行きたい」
そう言い出した時は驚いたが
そういう事を言うかもしれない
……と言う予兆はチラホラあった
たまに見るテレビ番組で
こどもが誰かの転生者かもしれない
と言うのを見たことがあったが…
まさか自分のこどもが
その転生したこどもだとは
思いもしなかった。
なんとなくの
予兆っぽいものはあった
教えてないはずの
難しい漢字を 一部だが知ってたり
テレビ番組のある大自然の映像を見た時
「ここにある気がする――」
と、呟いたのを私は聞き逃さなかった
これはもしやと思い、
私はテレビ番組に
依頼と協力をお願いしてみた
今持ちうる情報を提供後
それは数ヶ月後に
一緒に探してもらえることとなった
―――
当時 過去の彼は
真夏の戦場の真っ只中
さらには真夏の炎天下の中……
彼はもう、限界が来ることを悟り
手紙を書いて握りしめていたという
だけどそれを
どこかの地面に埋めて隠したのだと
彼の魂(記憶)に残ってる情報を頼りに
ひとつずつそれを確かめに行く
知ってる漢字
なんとなく見覚えのある服
うっすら知ってるテレビ番組の土地
彼の知っているであろう乗り物
ひとつずつ当てはめ
過去の人物と
その人の行動経路を辿っていく
―――そして
「たしか……このあたり!」
そこはかつて
戦場となっていた場所だと言う
ここは……
海岸と密林の境目のような場所
このまるで変哲もない下に
手紙を埋めたんだという
結構広いから手分けして探した方が?と提案するが、この子は既に掘り始めていた。自分たちは試しにそれを信じてみることにする。
―――ゆっくり掘ること十数分
信じられなかった
出てきた―――
―――確かに手紙だった
ボロボロで内容も
ギリギリ読めるか読めないか
そんな手紙がでてきた
その字は……
今のこの子にどことなく似ていた
特にひらがなの丸みや
漢字のはらい方の部分は
よく似ていたのだった
この手紙は誰に当てたものなの?
「…自分の好きな人に書いたやつ」
多分帰ったら結婚する
……的なやつだったのだろう
その思いを届けるために、
「帰る為」に ずっと持っていたのだろう
番組は、
その手紙の名前の女性を
探してくれた
すると、
―――見つかった
その人は、施設でほぼ寝たきりだが
まだご存命だというのだ
この子は、
会いに行くことを望んだ
この場所からはおよそ3日はかかった
―――ちょっとばかし
田舎の方だった
話は通っていたらしく
施設に到着すると、
割とスムーズに通してくれた
いよいよの 対面
「…………―――」
この子は、
しばらく様子を見ていたが
微かに面影を感じたのだろうか?
なにか思うところがあるのだろうか?
試す訳じゃないが…
一応覚えてる特徴を聞いてみた
「首のところにホクロが2つ」
―――あった
「あさがおが好きだった」
―――正解、よく育ててたらしい
「虫が平気」
―――今は違うらしいが
かつてはどんな虫もすでで捕まえてたらしい
「取れた歯を飲み込んだことがある」
―――え!?ホントだったの!?
と、親族が驚いていた
これを聞いて親族は
確信に近づいたらしい
すると、
……彼女が目を覚ました
彼女からしたらこの子は
誰かわかるわけはなかったが
まだ意思疎通は出来なくもなかったらしく
かつての手紙を見せてみると
それを目を細めゆっくり見てみる
(……読めんねぇ)
さすがに見えないらしく
代わりに読んでいく
かつての彼の思いを
……読み終えて彼女は
(……カンカンとって)
と言って来た
カンカン?
親族が持ち出したのは
随分古そうなお菓子か海苔かが
入ってたであろう缶の入れ物
「これ、海苔入ってたでしょ?」
この子はズバリと言い当てる
その中を開けると
普段から入れ物に使ってるらしい
その中の少しボロい封筒
―――手紙だ
ゆっくりとこの子に渡す
その中は、
筆で認められていた
「かなり達筆な字」で私は読めなかった
読める?
「……うん」
すごい………
彼はゆっくりと読んでいく―――
「………………………」
気がつくと彼は、
声なく泣いていた
……読んでいい?
「………話す」
ん、わかった
簡単にまとめると
彼女は戦争が終わっても
彼の訃報がくるまで
ずっと待ってたらしい
ずっと待ち続け……そして、
帰らぬ人となったことを知らされる
彼女はそれを知っても
誰ともしばらく合わなかったらしい
所が歳を重ねると
やはり縁談の話なども上がってくる
彼の死を知りつつも
それでも縁談のさなかでも
信じて待っていたらしい
だが彼女は
彼が最後に言った約束を守った
『もし……もしも帰らなかったら…
それでも君には、
絶対に幸せになって欲しい
それをどうか……約束して欲しい』
子を儲け、旦那を支え、
この家庭を幸せに
自分も少しでも幸せになるため、と
そして、
もしも……もしも叶うなら
「あなた」にそれを証明するために
気がつけば2人は
手を握りあっていた
「「―――ただいま」」
(……おかえりなさい、「あなた」)
〜シロツメ ナナシ〜
235
『こぼれたアイスクリーム』
野生のたぬき?キツネ?
何者かが食べたあと
それを更にカラスが食べに
更にその残りのところに
ありが群がっていた
……のだろうか?
誰かが落とした
アイスクリームの
そんな形跡
そんな何気ない
ただの日常の中の
ほんのちょっと珍しい一コマ
〜シロツメ ナナシ〜
234
『やさしさなんて』
やさしさ
それは性格じゃない
心の魔力
みんな使える魔法
やさしさは
心のパロメーターにもなる
魔力が多い時
初めて自分に、
そして人にもやさしくなれる
自分にやさしく出来るからこそ
ひとへのやさしさや愛が生まれる
魔力が枯渇すると
心が反転してしまう
ひとの回復魔法で
傷つくこともたまにある
それは
あなたがわるいわけじゃない
むしろそれは優しさの表れ
自分に使うための魔力を
相手のために使い続ける人だから
心の魔力が枯渇して
人のやさしさが辛くなってる証拠
まずは、使って欲しい
自分に向けて使って欲しい
自分のやさしさが溢れた時に
初めて人に使ってあげて
まずはあなたに
使ってね
あなたもあなたに
愛されるべき人なのだから
そして、
あなたがあなたに向けたものと
同じだけのやさせさを
「使いたいと感じた時」だけ
程よく使ってあげて欲しい
そうして初めて
世界にやさしさの輪が
広がっていくから
〜シロツメ ナナシ〜
233
『風を感じて』
〜自分軸の始まりの始まり〜
―――いつからだろう
褒められたくて頑張った
認めて欲しくて頑張った
勝ち取りたくて頑張った
負けたくなくて頑張った
ひとに言われて頑張った
―――いつからだったのだろうか
…ずっとどこにも、
自分の軸がないことに
私はちっとも気づかなかった…
今だってよく分かってない
無いはずがない!…そんな感じ
そして………
頑張っても褒められなかった
頑張っても認められなかった
頑張っても勝ち取れなかった
頑張っても負けてしまってた
頑張ってたのは…だれのため?
心はバキバキ 折られていた
折れて折れて、また折れて
周りも自分も責めていた
責めて責めて、また責めて
心のやり場が分からない
吐出し吐出し、また吐いて
吐き出し疲れて自分に問う
ありきたりなそんな問い
私は一体、何がしたい?
私は一体、何が好き?
私は一体、何がイヤ?
私は一体、どこ向かう?
問いて問いて、また問いて
応えはなんにも返ってこない
問いて問いて、また問いて
やっぱり応えは返ってこない
聞いた聞いた、ただ聞いた
心の声を、ただ聞いた
声はなんにも、聞こえない
それでも私は聞き続ける
聞いた聞いた、ただ聞いた
「今の私」を、ひたすら聞いた
聞いて聞いて、また聞いて
生きる心と本能に
応えは言葉じゃなかったから
理由は一旦 置いといた
「なんとなく」に 身を委ね
気の向くままに 動いてく
「なんとなく」を 辿ってく
行きたい場所は 足に任せ
にがてなものは ただ逃げた
すきかどうかは 置いといて
気の向くままに 動いてく
比較や優劣 心が痛い
それもそのまま感じてみる
悲しい苦しい… 頑張った
寂しい悔しい… 頑張った
堪えた怒った… 頑張った
我慢し抑えて… 頑張った
わたしはずっと 頑張ってた
自分以外の誰かのために
私は私を押し殺し
誰かのために頑張ってた
殺して殺して 押し殺し
今の自分が 迷子になるほど
だから今は、命に聞く
あなたの好きは、なんだろ?と
理由は別にいらないから
なくていいから選んでね
好きな理由は なんとなく
始めてみたのは なんとなく
行きたい理由は なんとなく
辞めたい理由は なんとなく
目に止めたのは なんとなく
「なんとなく」も立派な理由
「わたし軸」な、立派な理由
初めてそれで動いた時
私の風を感じてた―――
〜シロツメ ナナシ〜
232
『夢じゃない』
文明の目覚しい発達があった
崩壊したままの場所があった
大自然に溢れる世界があった
砂だらけの砂漠地帯があった
四季を感じられる国があった
万年おなじ気候の国があった
お腹いっぱい幸せな子がいた
何も食べれず空腹の子がいた
盗みが犯罪な世界があった
盗みを教える世界があった
戦いもなにも無い世界があった
武器が当たり前の世界があった
文字の書き方を教える人がいた
戦場の勝ち方を教える人がいた
水道を捻れば水が飲める世界があった
井戸水も汚れて飲めない世界があった
明日を夢みて布団で眠る子がいた
今夜が怖くて怯えている子がいた
朝日が昇る世界があった
朝日が昇る世界があった
どちらも存在する世界
どちらも、夢じゃない世界―――
〜シロツメ ナナシ〜
231