終わらない問い
卵が先か、鶏か先?
やっぱり、卵か鶏か?
「何ブツブツ言ってるの?暇なら洗濯物でも畳んで欲しいわよ」
「暇じゃないし。哲学の課題だからね」
「哲学?そんなの答えはでないでしょ。それなのに課題に出すなんて変わった先生ねぇ。」
まぁ。お母さんの言う通り答えは出ないし、講師の先生もちょっと変わっているかもしれない。でも、本当に課題だし、何にかしらの答えを考えないと終われない。どうしょう。
「進化論か因果性のジレンマね」
「へ?お母さん?何か言った」
「何も言ってないわよ。自分で考えなさいよ。課題なんでしょ。」
ダイニングテーブルから立ち上がり、母の腕を掴む。
「え〜。進化論って言ったよね。スマホで調べると進化論出てくるけど、私には分からないよ。分かるなら説明してよ〜。」
「あんた大学で何してんのよ。勉強したんでしょ。哲学に進化論はつきものよ。」
母から進化論なんて言葉が出てくるとは、
思ってもいなかった。
「あんたは本当に何してんのよ」と起こりながら説明してくれた進化論。
母は進化論は動物や植物が成長していく過程だと言った。完全にバカにされている。知ってます。卵と鶏はどうなった!
「バカねぇ。卵が成長したら鶏になるてしょ」
「じゃあ!卵が先?」
「あんたねぇ。卵は誰が産むのよ」
「はぁ?だからそれを考えるのが課題だって言ったよね。答えにならないじゃん」
「そうそう。これすなわち因果性のジレンマね。体験できて良かっわね〜。」
何が良かったのかさっぱり分からない。母に聞いた私が間違っていた。
「平和ねぇ。平和って何かしら?これも、答えがない問いよねぇ。今夜、ゆっくり考えてみようかしら。答えなんてないのなら、考えことに意味がある。かもしれないしね。」
母の独り言は聞こえず、ひたすら「卵、鶏、卵…」とブツブツつぶやく私がいた。
揺れる羽根
最近好きな人ができた。でもまだ片思い中だ。友達に相談したら「キャー。いいじやん。告白すれば〜」とはしゃいでいた。
イヤ。まだ片思いを楽しみたい気分だ。だって久しぶりに好きになった人だし、好きだと気づいてから高校生活が楽しい。そうなのだ。彼は何してるかなとか、また会えるかなとか、考えるだけで楽しい。
「ねぇ。あんたの好きな人て誰よ」
「う〜ん。ナイショ」
「なんでよ、言いなさいよ。協力するよ」
ありがとう。友達。でも、1人でドキドキするのも楽しいなんて言ったら、「恋に恋してるだけじゃん」とか言われそう。そうなのかな?まあ、楽しいからいいや。
私の好きな人は、コンビニの店員さんだ。実は友達ともよく行くコンビニだから、友達も見たことある人だ。たぶん大学生。
好きになったと気づいたのは、お婆さんの落とした小銭を一緒に拾ってあげていたから。あ、この人優しい人だって思ったら、いっきに好きになっていた。こんな理由て好きになったとは友達は言えないのもある。
昨日もコンビニへ。そして今日もコンビニでアイスを買う。部活帰りのアイスも楽しみの1つだか、あの店員さんのレジに並べるかドキドキするのも楽しみだ。
「どうぞ〜」
やった!今日もあの店員さんのレジだ。電子マネーで払いながら、少しずつ顔を上げ、店員のお顔を見ようとする。目線を上げるといつも首にフェザーペンダントが揺れて見える。
「ありがとうござました」
もう支払いは終わり?今日は顔が見えなかったし、次はお金で払えば少しは時間が稼げるだろうか。
そんな片思いの時期が2週間くらい過ぎた。いつものレジに並ぶとカウンターの向こうから声をかけられた。
「お前さぁ。俺のこと好きだろ。分かりやすいよなぁ。デートしてやってもいいよ」
ウソだろ。あの店員さんなのか。
ガバっと勢い良く顔を上げるとそこには、フェザーペンダントをした私の好きだった店員がニヤニヤして立っていた。
恋するのも一瞬だったけど、冷めるのも一瞬た。
「イヤ。行きません。好きでもないんで」
目の前の店員はポカンとしていたが、すぐにムスッとしてお釣りを渡してきた。
なんだあれ。なんであんなに上からなの。友達に言わなくて良かったよ。
あんなのどこが良かったのか自分でもさっぱり分からない。
部活帰りに行くコンビニ変えよ。
あのペンダントもこっそり同じものを買いたいなあと思ってたけど、辞めよ。アホらしい。やめ。やめ。なんかムカつく。
やっぱり恋に恋してただけか。
なんかムカつく。
秘密の箱
友達の家は古くから続く酒屋で、庭の奥に蔵を持っていた。子供の頃は、青々とした芝生の庭を幼馴染3人で走り回っていた。遊びがエスカレートしてくると庭の灯籠を倒したり、キャッチボールのボールが母屋のガラスを直撃なんてこともあり、友達の親父さんによく怒らていた。
そんな時の親父さんの決め台詞が「蔵に入れるぞ」だ。子供にとっては蔵は薄暗く恐怖の対象だった。
あの日も親父さんに怒られた時、いつもなら「蔵に入れるぞ」にビビっている友達が、その日は反抗的に「いいよ。蔵に入れろよ」と言った。親父さんは反省の見えない態度にさらに怒り本当に僕たちを蔵に入れ、鍵をかけてしまった。
「どうして蔵に入るなんて言ったのさ」
「蔵を探検しようぜ」
「探検?」
「そう。この蔵に秘密の箱があるらしい」
「秘密の箱?秘密ってなんのことだよ」
「いや。知らない。でも父さんが絶対に開けるなって言ってた。開けるなって言われたら気になるだろ」
母屋から持ってきたのか、懐中電灯を僕たちに渡しながら友達は秘密の箱の話しを始めた。その箱は、15cmくらいの大きさの茶色の箱で蔵の2階にあるらしい。箱の中は何か入っているかは分からないが、ずっと昔から蔵の中にあるらしい。
蔵の2階に上がるとそこは真っ暗でジメジメしていた。懐中電灯の光を当てれば、そこには、いろいろな物がたくさんあり、この中から探すのは時間がかかりそうだった。なのに、友達は嬉しそうに笑っていた。
「よし!探すぞ」
「本当に秘密の箱なんてあるのかよ。秘密の箱って何が入ってんの。」
「ある。中身は箱を開ければ分かるよ。」
2階で長いこと茶色の箱を探すと3つの箱が出てきた。どれも15cmくらいのサイズで秘密の箱といわれるものと同じ大きだった。
「どれが秘密の箱か分からないから、全部開けてみよう。ちょうど3つあるし、せーのでいっべんに開けようぜ」
「本当に開けるのかよ。いいのかよ。」
「ビビってんの?帰ってもいいよ。」
「分かったよ。開けよう」
「せーの」
僕たちは箱を一斉に開けた。
「何だ空じゃん。そっちは?」
「こっちも空。それは?」
僕の開けた箱には、紙切れと手鏡が入っいた。紙切れには、『鏡を見れば全てが分かる』と書かれていた。僕の前に立つ友達が手鏡を持ち鏡を覗いた。
「お前たち!何をしていいる!」
蔵の入口から親父さん怒鳴り声が聞こえてきたため、友達は慌てて手鏡を箱に戻し、紙切れを入れて蓋をした。
「この箱に触ってないだろえな。」
「ないよ。」
「ないです。」
でも、僕は見た。友達が手鏡を覗こうとした時、友達は親父さんの声に驚いて鏡を見ていなかったけど、鏡の中から骨だけの指が友達の顔に延びていたのを見た。
僕は聞いた。鏡から「やっと出られる」としわがれた声がしていたのを聞いた。
すぐに箱に戻されて蓋をしたためそれ以上は出て来なかった。あの紙切れはお札なのかもしれない。
そのあと、手鏡の話しは誰もしていない。話しても誰も信じてくれないだろう。
僕たけの秘密の話し。
秘密の箱の話しだ。
無人島に行くならば
島への上陸許可を事前に取り、現地のルールを守りましょう。
「あの無人島。グランピングで泊まれるらしいよ。夜はBBQだって。テレビで見た」
「へえ〜。あんなとこに泊まる人いるんだ。私は行かない〜。」
「私も行かない。結構揉めたもんね」
「そうそう。私らが小学生の時からだから長いよね〜。グランピングになってんだね。」
私達が小学生の頃はあの島は無人島ではなかった。おじいさんが1人であの島に住んでいた。ずっと、ずっと前からだ。
あの島にレジャーランドを建てる計画がもちあがり、業者がおじいさんに立ち退きを求めていたみたいだが、おじいさんは業者に会わなかった。あの島全てがおじいさんの土地ではないが、島のほぼ中央に家があるため立ち退きを要求されていた。
業者はおじいさんの許可を取らずに家をブルトーザーで破壊し、レジャーランド計画を進めてしまった。
その後、おじいさんがどうなったかは、よく知らないがとこかの老人ホームで亡くなったらしい。
レジャーランドは建設されたが、本島から水上バスで10分足らずの島なのにアクセスが悪いと言われ、客足は鈍く、何年も赤字だったらしい。地元では、おじいさんの祟りなんて噂も出て、ますます人が来なくなった。
今度のグランピングの経営者は、おじいさんに許可を取ったのだろうか?
亡くなったからと言って、事前に許可を取らないとレジャーランドと同じになるかも…。
だって、グランピング施設はこの島で4件目のレジャー施設になるから。
無人島に行くならば、島への上陸許可を事前に取り、現地のルールを守りましょう。
許可はおじいさんに取ったほうがいい。
秋風
夏は海水浴、花火大会、BBQ、いろいろ楽しいことが1杯だった。少し涼しくなって来た頃吹く秋の風。これもなかなか気持ちのいいものだ。いつも、これくらいの季節だといいなぁと思ってしまう。
でも秋の風、秋風が吹く頃、もし、あなたが、港に小さな舟を見つけたら気をつけたほうがいい。
なぜって?
その小舟の終着地は賽の河原だからね。
ヒヒヒ。
小舟が見えて、瞬きをしたら、次に目を開けた時には小舟の中。
ギィーコ、ギィーコ。と赤鬼か青鬼が舵を漕いでいるはずさ。
ギィーコ。ギィーコ。
僕?
僕は小舟の船長かな。
秋風が吹く季節に僕に会わないこと祈っているよ。
ヒヒヒ。