未知の交差点
あの交差点を曲がれは、逃げられる。
逃げるなら今だ。
あいつが、いないすきに。
楽しげに電話で話しているうちに。
逃げろ。
動け。私の足。そして、走れ!
見つかれば、また殴られる。蹴られる。
いや。殺される。
車の鍵が開いている。
ドアに手をかけ、一気に力を入れる。
「あ?待ちやがれ」
走れ。
走れ。
走れ。
あの交差点を曲がれは、私は自由になれる
未知の交差点だ。
「助けてください」
交差点を曲がった先にあるコンビニに駆け込む。
「私。ずっと監禁されていて…。助けてください」
あの男が慌てて追いかけてくるが、店長さんがバックヤードに隠してくれた。
「あんた。警察くるからな。逃げんなよ」
その後、警察が来て男は逮捕された。
あー。私はやっと解放されたのだ。
頬に一粒の涙が溢れた。
一輪のコスモス
「お嬢さん。もう終にしませんか」
彼女は美しく整ったかんばせを私に向けた。強く力のある瞳が印象的な女性だ。
「どういう意味かしら?探偵さん。」
「もう、いいではありませんか。これ以上罪を重ねても意味ありません。イヤ。貴方を止められなかった罪は私にもある」
大きな瞳が瞬きを2回繰り返し、ニコリと笑った。
「私の罪?それはなんですの。私には
分かりかねますわ」
「貴方がコスモス畑に隠した秘密ですよ。
あー。もう警察が掘り起こしているころてすね。もちろん貴方1人では無理だか協力者がいれば少女1人を埋めるなんてたいしたことてはありません」
色白の顔がさらに青白くなる。そして、可憐な女性は、本当の姿を表す。
「私が殺めたとでも!そんな証拠はどこにあるのですか!無礼です」
美しいかんばせは、強く力のある瞳は、跡形もなく消え、そこには般若が佇んでいた。
「お嬢さん。その一輪のコスモスはどちらで手に入れましたか?コスモス畑のコスモスとDNA鑑定をすれば、同一の種類だと分かるはずです。」
屋敷のダイニングテーブルの上の一輪挿しにピンクのコスモスが揺れていた。
「な、何をおしゃっているのかしら。私は関係ないわ。あの男が勝手にやったことよ。そうよ知らないわ。」
「その男も捕まりますよ。貴方の使用人だ。言い逃れはできませんよ。お嬢さん。そんなにあの少女、妹さんがお嫌いでしたか。」
彼女がスカートを握り締めながら叫び声を上げた。
「妹!? 誰のことです。私には兄弟はいません。あれが妹!気味が悪い。あれは妖怪です。そうだわ。あれは妖怪。そうよ。私は妖怪退治をしたたけです。」
「お嬢さん…。」
ドンドン。
「警察です。失礼しますよ」
笑いながら、その場に崩れ落ちる彼女を警察が足早に立ち上がらせる。
連行される彼女は、振り向きながら再び笑った。
「探偵さん。あなたなら私を救ってくれると思っていたのに。あなたもあの妖怪の味方だった。たいした教養もないくせに男に媚びへつらう。あれは妖怪です。穢らわしい妖怪。でも、人を殺めてしまった私も人間ではいられない。さよなら探偵さん。」
探偵である私の罪は、貴女の秘密に気づきながら黙っていたこと。そして、貴女と対峙する勇気がなかったこと。
私はいつでも貴女の味方だ。永遠に。
秋恋
秋に始める恋は長続きしやすいという。
本当だろうか。
私の恋はいつも上手くいかない。
なぜか振られる。
私は好きなのに相手は決まって、「俺のこと好きではないよな」と言う。
イヤ。好きです。
コミ障なのか。
口下手なのか。
なにがダメなのか分からないが、いつも上手くいかない。
寂しい。
独り身は寂しいよね。でも、いつも1人だし気楽かな。
おっと…。これがダメな原因らしい。
本当か?怪しい。
でも、前に教授が言っていた。
「秋は日照時間が減ることで、元気ややる気と関係する脳内物質「セロトニン」が減少し、寂しさや物悲しさを感じやすくなると考えられている」と。
そうか。日光浴における体内変化か。
納得できる結論だ。
では、私の失恋も太陽の動きに関係したもなのか。
それなら、仕方がない。
誰も自然には逆らえない。
納得だ。
それでも恋がしたい。
こんな私でも恋がしたい。
秋からの長続きする恋をするために、エステに美容院の予約をしないと。
次にくる恋が本物でありますように。
私の最後の恋になるように。
待ってろ!
秋恋!
愛する、それ故に
お前はここにいればいい。
誰にも渡さない。
お前は私だけのものだ。
なあ。
小百合。
お前が生まれた時から、ずっとずっと見てきた。
お前は成長するにつれ、色艶が増し、少しづつふくよかになっていく体。
見ているだけで、ゾクゾクとした喜びが込み上げてくる。
あー。
可愛い。
私が生きているうちは、私の全てをおまえにささげよう。愛する、それ故に、お前をこの家から出すつもりはない。
この平和な私たちの世界で楽しく暮らしていけばいい。他は不要だ。
あー可愛い。
可愛いいなぁ。
「ちょっと。小百合がそっち行ったよ。
お父さん。しっかり捕まえていてよ。
もう、1ヶ月もお風呂入ってないから臭さいよ。あ!小百合逃げないの」
「ナアー」
私の小百合が泣いている。
よしよし。
うるさいバカ娘はほっとおけばいいよ。
お前は気品さは、私たけが知っていれはいいことだからな。
風呂もいいさ。なあ。小百合。
小百合をそっと抱き上げる。
イヤ。少したけ臭うか。
このまま風呂場へ直行だ。
あー。
私の小百合。
あのバカ娘め。もう少し優しく洗わないか。小百合の艷やかな毛並みが…。
「ナァ。ナァ。ナァ。」
小百合が泣いているだろ。
早く戻っておいで。
私の可愛い、可愛い、黒猫の小百合。
私だけがお前の可愛いさを知っていればいいよだから。
「小百合〜。本当可愛いねぇ。綺麗になろえね〜。」
どうやらバカ娘にも可愛さが分かるらしい
静寂の中心で
大学のサークル仲間5人と廃墟に肝試しに来ている。この話しを持ちかけてきた、高梨先輩は大のオカルト好きで朝からテンションが高めだ。
「ここに入るの〜。ナナ怖い〜」
「怖くなきゃ肝試しにならないだろ。ワクワクするぜ」
後輩のナナちやんの軽い口調が怖さを少しだけ和らげてくれる。
それでも怖い。
見上げれば、すぐそこに廃墟がある。
やっばり怖い。
落ちかけた屋根から伸びる壁は、黄色く変色し所々土や蔦がこびりついていた。窓ガラスも割れ、まさしく廃棄だ。
壊れた石の階段を2、3段登り玄関の取っ手に高梨先輩が手をかけ、一気に扉を開けた。
そこは玄関ホールなのか広い空間だったが、足が1つない椅子やテーブル、割れたタンスがあちらこちらに散らばっている。
「物多すぎ〜」
ナナちゃんの言う通り、玄関ホールとしは大きいはすなのに物が溢れていて足の踏み場もない状態だ。
でも、1番目につくのは、奥にある大きな螺旋階段。
玄関ホールの先にある暗い闇。光も音もない静寂の中心で白く浮かび上がる螺旋階段。
「あれ…。登るのよね」
いつも冷静な綺羅先輩の声も震えていた。
やっばり怖い。もう帰りたい。
なのに高梨先輩のウキウキした声が響いた。
「当たり前だろ。登るぞ。おい!隆は1番後ろな。」
先頭に高梨先輩、次に綺羅先輩、ナナちゃん。私、そして最後は同級生の隆くんが続き階段を登っていく。
階段を上がった先の2階は、客室なのか廊下を挟んでいくつもの扉が並んででいた。
「よーし。奥から扉1つ1つ開けていくそ」
高梨先輩の後に続き奥へ奥へと進み、1番奥の部屋の扉の取っ手に高梨先輩が手をかけ、先程と同じように一気に扉を開けた。
「え?」
扉の向こう側は、客室の扉が連なる廊下が伸びていた。
「おい!俺開けたよな。どういうことだよ」
「前に進むしかないわ。後の扉はないわ」
綺羅先輩の言葉につられ、後を振り向くが扉はなく廊下が伸びていた。
「嫌だ。怖い。怖い。帰る。そうよ帰る」
ナナちゃんはすでにに半狂乱で駆け出し、
薄ぐらい闇の中に消えて行った。
「ナナちゃん!」
慌てて名前を呼び、ナナちゃんのあとを追うがすでに姿は見えなくなっていた。
どうしょう。
「1階に降りて外に出ましょう。なにか手がかりがあるかもしれないわ」
綺羅先輩の提案により螺旋階段を探しながら前に進み、階段を降りて1階に戻ることになった。
長く続く廊下を歩く。
かなりの時間が経過したき気もするし、そうでもない気もする。
廊下の真ん中あたりに螺旋階段の円が下へと伸びでいた。
私たちは、急いで螺旋階段を降りて1階へ行くが、ナナちゃんをいなかった。
「とりあえず、進もう」
隆くんの力強い声に押され歩き出す。
また、闇の中に螺旋階段が薄っすら白く浮かび上がっていた。
その螺旋階段の脇を抜けると椅子やタンスが散らばる部屋、その奥に玄関が見えた。
「やったぜ。戻ってきた。」
高梨先輩が階段の手すりに捕まり、進もうとした時、赤い液体が先輩の腕に落ちて広がった。
「なんだ?!」
驚いた高梨先輩が螺旋の上の方を見上げれる。そこには頭から血を流し、目を見開いたナナちやんの土気色をした顔が私を見おろしていた。
「ぎやあー」
うそ。うそ。違う。違う。あれはナナちやんではない。
「キャアー」
「おい!ふざけるな!バーチャルだろこれ。こんなことあるか」
ビー。ビー。
高梨先輩の叫び声をかき消すくらい大きな警報音が響き、無機質なアナウンスが流れ始める。
Warning。Warning。
警告。警告。
バーチャル空間内での空間否定は認められていません。空間での出来事にしたがってください。できなければ、ゲームオーバーとなります。
Warning。Warning。
「ゲームオーバーだ。終わりだ。終わりにしろ」
高梨先輩がこのバーチャルゲームの終了をつげた。暗闇は一転し、白、白、白。白。
白一色の部屋で、私たちはゴーグルとヘッドホンをつけ椅子に座っていた。
ただ、隣の椅子が空いていた。
あれ?
誰かいたかな。
高梨先輩、綺羅先輩、私、隆くん。
大学のサークル仲間4人で来たよね。
なんで、椅子5個あるのかな?
うーん。ま、いいか。思い出せないし。
「まあまあ、面白かっただろ」
「そうね。肝試しなんて高梨くんの好みよね。」
「この次は、バーチャルレーシングにしましよう」
やっばり、椅子の数なんて誰も気にしていないみたい。
私も深く考えるのは辞めよう。
「お腹すきました。解散でいいですか」
「そうね。また。」
「おう。じゃあな。」
「次はレースですよ。」
私は白い部屋をでてカフェへ向かう。
待って〜。待って〜。
嫌よ。1人で廃墟に残りたくない。
たやは