たやは

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一輪のコスモス

「お嬢さん。もう終にしませんか」

彼女は美しく整ったかんばせを私に向けた。強く力のある瞳が印象的な女性だ。

「どういう意味かしら?探偵さん。」

「もう、いいではありませんか。これ以上罪を重ねても意味ありません。イヤ。貴方を止められなかった罪は私にもある」

大きな瞳が瞬きを2回繰り返し、ニコリと笑った。

「私の罪?それはなんですの。私には
分かりかねますわ」

「貴方がコスモス畑に隠した秘密ですよ。
あー。もう警察が掘り起こしているころてすね。もちろん貴方1人では無理だか協力者がいれば少女1人を埋めるなんてたいしたことてはありません」

色白の顔がさらに青白くなる。そして、可憐な女性は、本当の姿を表す。

「私が殺めたとでも!そんな証拠はどこにあるのですか!無礼です」

美しいかんばせは、強く力のある瞳は、跡形もなく消え、そこには般若が佇んでいた。

「お嬢さん。その一輪のコスモスはどちらで手に入れましたか?コスモス畑のコスモスとDNA鑑定をすれば、同一の種類だと分かるはずです。」

屋敷のダイニングテーブルの上の一輪挿しにピンクのコスモスが揺れていた。

「な、何をおしゃっているのかしら。私は関係ないわ。あの男が勝手にやったことよ。そうよ知らないわ。」

「その男も捕まりますよ。貴方の使用人だ。言い逃れはできませんよ。お嬢さん。そんなにあの少女、妹さんがお嫌いでしたか。」

彼女がスカートを握り締めながら叫び声を上げた。

「妹!? 誰のことです。私には兄弟はいません。あれが妹!気味が悪い。あれは妖怪です。そうだわ。あれは妖怪。そうよ。私は妖怪退治をしたたけです。」

「お嬢さん…。」

ドンドン。
「警察です。失礼しますよ」

笑いながら、その場に崩れ落ちる彼女を警察が足早に立ち上がらせる。
連行される彼女は、振り向きながら再び笑った。

「探偵さん。あなたなら私を救ってくれると思っていたのに。あなたもあの妖怪の味方だった。たいした教養もないくせに男に媚びへつらう。あれは妖怪です。穢らわしい妖怪。でも、人を殺めてしまった私も人間ではいられない。さよなら探偵さん。」

探偵である私の罪は、貴女の秘密に気づきながら黙っていたこと。そして、貴女と対峙する勇気がなかったこと。
私はいつでも貴女の味方だ。永遠に。

10/10/2025, 11:49:04 AM