「ボス、この雲、流石に怖くないですか?」
「ああ、こりゃまずいな。どっかで雨宿りするしかねえなぁ」
「あそこの駄菓子屋の下とか良さそうじゃないですか?」
「お、良さそうだな」
2人は小走りで駄菓子屋に向かった。
「うわぁ〜これはかなり酷いですね」
「危なかったな」
外は夕立の風雨で酷く荒れていた。風は荒れ狂い、立っていたら空に飛ばされそうだ。
「思ったんですけど、ボスぐらいの体格の持ち主ならこんな嵐なんかへっちゃらじゃないですか?」
「……お前、阿呆なのか」
「さすがに冗談ですよ〜。」
「ボス、何してるんですか?」
「いや、なんか、駄菓子屋いると甘いもんが食いたくなるんだよな」
「じゃあなんか買いましょうか」
俺はお祭りというものが好きではない。なぜなら、騒がしすぎる上に金も山ほど使わされるからだ。
だが、俺は今、お祭りに来ている。何故かって?
「ボス〜、これも食べましょうよ。絶対ボスこれ好きですよね!」
こいつがいるからだ。こいつに無理やり連れてこさせられて来てしまった訳だ。
だが意外と苦ではない。何故だろうか。
「お、おう、ちょっと待ってくれや。流石に食べすぎた……」
「えー、もうお腹いっぱいなんですかー?」
「わ、わかった、これが最後だからな?」
エリオと一緒にいる時間は楽しいし、好きだ。
こいつと一緒なら、どこへでも行けそうだ。
「エリオ、ここだな」
「そうですね、ボス。行きましょう」
エリオと津詰は通報のあった人質のいるという家の前に来ていた。エリオはさびたアパートの廊下の床を見ていた。
---ガチャッ。
「ボス、どうですか?」
「こっからは見えない。隠れているだろうな。慎重に行くぞ」
「オッケーボス!」
エリオたちは抜き足で部屋の中に入った。
中は何も変哲のない狭いアパートの一室だった。
「このまま進みます?」
「そうするしかなさそうだな」
2人はそのまま進んで居間に入った。しかし、そこにも誰もいなかった。
「どういうことだ?誰もいないじゃないか」
「うーん、どうします?押し入れとかも見て見ます?」
「そうだな、少し危ないが」
津詰は左の方にある押し入れに目をつけた。エリオは自身の後ろにある押し入れに手をかけた。
その時、エリオの後ろからガサッという音が聞こえ、エリオは何者かに襲われた。
(何奴っ?)
エリオは背中を刺され、痛みが全身に走るのを感じた。その後エリオは意識を失った。
(……っ、ここは?)
エリオは辺りが暗く、寒い場所に立っていた。
(オレ、さっき後ろから刺されて倒れたんだっけ……)
エリオは状況が理解出来ず、呆然としていた。
すると、エリオは前から何かが来るのに気づいた。
(誰だ?……女の子?)
エリオの目には奇抜な髪と服装をした女の子がぺたぺたと足音を立てながら来ている様子が写った。
「おぬし、何者か?」
いきなり話しかけられたエリオは驚いて後ずさりした。
(しゃ、喋った!こ、こういう時って自分から話しかけたら良くないんだったっけ)
「とっとと名乗らんかい!」
エリオは黙っていると、怒鳴られた。
「お、オレは襟尾純、警察官だ」
少し弱気になって名乗り、怯んだ。
「ほぅ、けいさつかん、というんだな。聞いた事のない名前じゃ」
「それ、名前じゃないです、名前は襟尾純です」
「まあ良い、こちらからも名乗るとするか。我はソティス。本当はこの世界の住人じゃないが、なにかの力に引っ張られて来たのじゃろう」
エリオは異質な雰囲気を感じ取り、戸惑った。
(ソティス?日本人なのか?だけど、日本語は流暢だ。何者?)
「おぬし、先程刺されよったな?」
「そ、そうです」
「だからじゃな。我には時を戻す力がある。時を戻したいか?」
(はい)(いいえ)
「うわっ、なんだこれ?選択肢が浮いている??」
「いいから選ぶのじゃ!」
エリオはさらに戸惑っていたが、少し冷静になって考えた。
「これってどのくらい時を戻せるんですか?」
「おぬしの記憶を辿るとすれば、部屋に入る前からじゃな」
これを聞いたエリオは即座にはいの選択肢を押した。
「まあ、そうじゃろうな。よかろう、戻してやろう」
その声を聞いた直後、エリオは再び意識を失った。
「……おい!エリオ!聞こえるか?」
「……ん?ボ、ボス!」
「ようやく気づいたか。さっきお前さんがいきなり倒れてびっくりしたわ。何かゴニョゴニョ言ってて少し気味悪かったし」
「あー、すみません、ちょっとうなされてたみたいですね。まあ、とりあえず仕事、続けますか」
「よし、行くか」
エリオの脳内には刺された光景がフラッシュバックした。
(もう、オレは完璧だ。)
オレはボスを愛してる。
だからこそオレはボスのためにできることは何でもしたい。
仕事も、家事も、もちろん、あれもね。
「ボス、あのお家、鳥かごがありますね。鳥を飼っているみたいですね」
エリオは道路脇の住宅の窓を指さした。
「どんな鳥を飼ってるんだろうな」
若干社交辞令気味た言い方で津詰は答えた。
「ボスはペットを飼うとしたら何飼いますか?」
「うーん……子猫とか?」
「流石、わかってますね、ボス。そういうギャップ、オレは大好きですよ。
エリオは少し頬を赤らめた。