Reme

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9/5/2023, 1:34:15 PM

貝殻


「やっぱり海は良いね」
「来るとなんだかほっとする」


彼は内陸の出身だった。
だから余計に海に憧れがあったのか、来るととても喜んだ。
そしていつも、「安心する」と言っていた。


「この貝殻はどこから来たんだろうね」
「あ、でも元々は海の中にあったものが流れてきたのか」


貝殻を拾い、1つ1つにどこから来たのか問いかけていた。
そして最後は必ず


「元来た場所にお帰り」


そう言って、海に流していた。
持ち帰ることは1度もなかった。

なんか、浦島太郎が助けた亀を海に返してるみたいだね、と
笑いながら話していると


「誰にだって帰る場所はあると思うから」


と、返してきた。



あれから、数年。
自分は1人で海に来ている。

貝殻を1つ1つ手に取っては


「誰にだって帰る場所はあると思うから」


そんな台詞が頭を過ぎる。


彼の帰る場所はどこだったのか。
少なくとも自分ではなかったのか。


確か出会ったのもこの近くだったな。


もしかすると、彼は






海には、揃えて置かれた靴だけが残っていた。


Fin.

9/4/2023, 1:51:13 PM

きらめき




街灯は虹色

空まで届きそうな高いビルが立ち並んで

その間には華やかなショーウィンドウ

歩き続けるのに疲れたら
あの最上階のバーにでも行こう


底が赤い靴を鳴らして

バッグは小さくて構わない

僕にすべて任せてほしい



秘めたきらめきに気づかない君を

僕が必ず導いてあげる

この手は離さないから。

9/3/2023, 1:45:46 PM

些細なことも



あ、今日は前髪を分けてる。

その服は初めて見たかも。

今日は少し眠そう。

今日は少し元気がなさそう。

今日は楽しそう。

あ、今ちょっと言われたくないこと言われたな。
だけどすぐに笑顔で隠したな。

あの人のことを褒めてるな。
些細なこともすぐに褒められる人だもんね。



些細なことも、俺には全部お見通し。
だけど君は、そんな俺など露知らず。

誰よりも君のことを見て、感じ取ってるのに。



ねえ、なんでそんなに分かるの??

それはもちろん、君ばかり見てるからだよ。



いつかそんな会話が

些細なことから始まりますように。

9/2/2023, 4:33:26 PM

心の灯火


そっと火が灯る

ゆらゆら、ゆらゆらとどこか頼りなくも
消えそうで消えないそれ

色は青

赤く燃えたぎるような色ではない

優しいような
寂しいような
だけど芯はあるような

静かに、静かに
パチパチという音すらしない
物静かに、強く揺らめく灯火

それは貴方そのものかもしれない
いや、私の心そのものかもしれない


消えないようにそっと両手を添えてくれる
貴方なのかもしれない

9/1/2023, 4:14:52 PM

開けないLINE


もう逢わない。
もう連絡しない。
もうおしまい。


そう思って、彼を友だちから削除した。
いやもう、いっそLINEアプリごと削除してやった。


元々スマホとか疎いし
友達だってそんなにいない。
最悪SMSと電話さえあれば大丈夫。


大丈夫。


大丈夫。


大丈夫。




大丈夫じゃなかった。



なんで友だち消したんだ。
なんでLINEアプリごと消すなんてしたんだ。

なんで
なんで・・・


結局後悔しながら、しぶしぶLINEアプリを入れ直した。
画面はログインから始まる。
アプリを消しただけではアカウントは消えないみたいだから
再度ログインする。


「バックアップを復元しますか?」


とりあえず言われるがまま「復元する」を押したら

彼の名前が現れた。


最終バックアップ日:20××年〇月×日


あの日、だった。


そのまま彼とのトーク画面を開いたのは言うまでもない。

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