Reme

Open App
8/31/2023, 2:00:11 PM

不完全な僕



欠けているところがないと言われる。

天は二物を与えずなんて、嘘だねと言われる。

知識とか
人間関係とか
性格とか
容姿とか

振る舞いとか
地位とか名誉とか
財産とか資産とか

総てにおいて
欠けているところがないと言われる。


そう、見えるかい?


だけどそこには“僕”はいないんだ。

本当の“僕”は誰も知らない



誰かがふっと呟いた



あなたは“不完全な僕”でしかない。



Fin.

8/30/2023, 1:53:10 PM

香水


「ラベンダーの香りだよ」
「気に入ってるんだよね」


ある日、彼は香水を使い始めた。
今までそんなお洒落なものはそんなに手を出さなかったのに。

使い始めた香水は、こっそり調べてみたらいわゆる
“モテ系”なタイプのものらしかった。
かくいう自分も、こそこそ調べるなんてらしくないことに
今までは手を出さなかったのだけれど。

でも、彼は決して“異性にモテたい”とあからさまに発信する
タイプではないことはよく知っている。
ならば、誰かに好意を寄せていて
そのアピールとして使い始めたのだろうか。

その相手は誰かなんて、分かるはずはない。

その相手はいつか、ラベンダーの香りに引き寄せられて
彼の好意にいつか気づくのだろうか。

好意に気づいて
いつか彼と同じ香りを漂わせて
自分の前に現れたりするのだろうか。

自分も同じ香水を付けて
彼の前に現れてやろうか。
それともあえて彼の前には現れずに、
彼の周辺の友人の前にでも現れて
「え、相手はお前だったの?」とでも言われてやろうか。

柄にもない姑息な手口を頭の中で浮かべ続けていたある日
彼は言った。


「ラベンダーの色はあなたの誕生色、ラベンデュラ。
花言葉は「あなたを待っています」「期待」「幸せが来る」だよ」


その香水が柄でもない自分の一部となったのは
それから間もないことだった。


Fin.

8/29/2023, 1:45:08 PM

言葉はいらない、ただ・・・


「頭良いね」
「礼儀正しいね」
「いつも笑顔だね」

「すごい」
「さすが」
「今日も冴えてる」


日々、かけてくれる言葉。


「調子のってんな」
「ただの八方美人じゃん」
「アイドルがインテリぶるな」

「ムカつく」
「嫌い」
「出てくるな」


無機質で四角い、薄っぺらな小さな箱に並ぶ言葉。
どっちも見慣れた言葉たち。

優しい言葉。
厳しい言葉。

温かい言葉。
貶す言葉。

どれも同じ言葉だけど
受け取る時の感情は多岐に渡りすぎて
一喜一憂するのも疲れてしまった。

そんな時は言葉なんて投げ捨てて

心で接してくるあなたに逢いたい。


「ただいま」
「おかえり」


そっと自分を包んで、髪を撫でてくれるあなた。
温かな笑顔で微笑んでくれるあなた。


「仕事大変だったね。今日は俺がご飯作ったから」


何も言わなくてもそう言ってくれるあなた。

言葉なんていらない。

ただ分かってくれる、あなたがいてくれればそれでいい。

8/28/2023, 1:46:07 PM

突然の君の訪問。

♣️「・・どうしたの、急に」


とある休みの日、♠️は俺の家にやってきた。
♠️は同じグループで仕事をしている仲間。


♠️「近くまで来たから、寄ってみた」


・・・嘘だ。
♠️は、休みの日はほとんど家から出ることは無い自分の家が
大好きな性分。
確か今日は♠️も休みだったはずだ。
だから外に出るなんてないはず。

そんな風に嘘が下手なのも、♠️の性分だ。


♣️「・・どうぞ」
♠️「ありがとう」


とりあえず家の中に入れて、ソファへ促す。
お茶入れるね、と一言告げて、自分はキッチンへ向かった。

ちょうど友達から貰った美味しいコーヒーがあるから
それをいれていたら。


♠️「♣️。」


近くに♠️の声がして、振り向くと彼はキッチンの入口辺りに
立っていた。


♣️「…な、に……?」


ゆっくりと♠️がこちらへ近寄る。


♠️「今、悩んでるでしょ」


思わず、コーヒーを入れる手が止まる。


♣️「・・何の話…?」
♠️「とぼけないで良いよ。俺には分かるの。」


真っ直ぐに見つめてくる♠️。
そう、彼は嘘もつけないどころか、駆け引きもできない人。


♠️「話して??そのために来た」


結局、最初の嘘もバラしてしまう♠️。
でもここまで直球で来られたら、さすがにこっちも
隠しようがない。


♣️「・・分かった」
♣️「コーヒー持っていったら、話すね」


そう言ったら、彼は急に優しげな表情に変わった。
うん、とだけ言って、ソファに戻る。

それから涙が流れるほどまで話を聞いてくれたのは
他でもない彼だけだった。


8/27/2023, 1:37:50 PM

雨に佇む

しとしと降る雨は嫌いではない
時にそれは1つの絵画のように、
風景のように見えることもある
一瞬にして景色を変えてしまう自然の魔法

雨に佇む

激しく降る雨は好きではない
けれどそれは時に一瞬にして周りを白く染め
霧のように街を覆ってしまう
一時の罪滅ぼしにも見える自然の魔法

雨に佇むときは
一時別世界に入り込んでしまったような
自然の魔法にかけられる

Next