星が、ずっと羨ましかった。
自分に付けられた名前も知らずに
暗い空の中を気ままに漂って
それだけなのに人の目は惹き付けて
届きもしないそれ等の物語が
心底、羨ましくて
私の知らない世界に
羨望は消せずに星空を見る度に
下から睨め上げるしか術は無くて
今でも時折、星空を見上げると
良いなぁと声を上げてしまうんだ。
ー 星空 ー
ハッピーエンドを越えた先
時を止めた登場人物達
成し遂げた功績に笑顔のまま
誰かは主人公へ駆け寄り
誰かは手を取り合って泣き笑い
しかし、物語は終わってしまい
一向に幸せな世界の続きは描かれぬ
誰が読んでくれようか?
ただ幸せなだけの他者の生活など
目を通す読者の方が珍しい
だが、誰かの目に触れなければ
時は動かず存在さえも忘却の彼方へ
いつの間にか、「物語」は瓦解し
過ぎ去ってしまった栄光は
「作者」だけが知っている。
ー 神様だけが知っている ー
二人で予約したレストラン
グラスは二つなのに
向かいの席は空っぽで
夜景だけが透けて見えていた。
スマートフォンの通知には
「仕事が長引いて行けそうにない。」
そんな淡白な文章が一つ光って
特別だった筈の今日を忘れた貴方
今頃、別のお姫様と踊っているのかしら?
もう、貴方の居場所は私じゃないのね。
この夜景の何処へ身も心も寄せているのか
すれ違うだけの私では最早、知る術もない。
ー 窓越しに見えるのは ー
その大きな雲へ「見越した」って叫んだら
どっかの妖怪みたいに縮んだりしないかなぁ。
ー 入道雲 ー
最後なんて思わなかった。
だって、何でもない日だったんだ。
いつも通り互いに時間が合ったから
二人でぶらついて、遊んで
飯も食いに行ってさ。
帰り際もまた遊ぼうなって
お互いに笑いあった筈なんだよ。
いとも簡単に消え去った君に
現実感なんて到底、感じられなくて
一ヶ月の間を置いてから
君とふざけて回した
ガチャガチャのキーホルダーが
鞄の底から不意に出て来て
あれが本当に最後だったんだって
胸が軋む程、思い知らされたんだよ。
ー 君と最後に会った日 ー