狼星

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10/31/2023, 1:56:05 PM

テーマ:理想郷 #351

人間たちは俺たち妖怪を怖がる。
別に怖がらせたいわけじゃない。
友だちになりたいから近づくのに、
悲鳴を上げて俺たちから逃げていくんだ。
俺は人間が好きだ。
人間は俺が知らないものをたくさん知っている。
だから俺は
人間と仲良くできる世界を作りたいと言った。
そしたら仲間に笑われた。
「そんなの理想郷だ」って。
そんなのやってみないとわからないじゃないか。
そう言って怒ると仲間たちはムッとして
「じゃあ、お前、人間に逃げられたことないのかよ
 悲鳴をあげられて、泣き叫ばれたことないのかよ」
そう言われて何も言い返せなかった。
俺は妖怪。
怖がられたことだって何度もある。
たしかに理想郷かもしれない。
でももしかしたら、
妖怪を受け入れてくれる人間だっているかもしれない。
そんな言葉を口には出せなかった。
なぜなら俺は、
そんな人間あったことがなかったからだ。

10/30/2023, 2:34:25 PM

テーマ:懐かしく思うこと #350

懐かしく思うこと
それは青春。
ある人に突然、恋をして
誰かとその人が話していたら嫉妬して、
でも告白する勇気はなくて、
そんな感じを彷徨う感じ。
懐かしくて切ない。

懐かしく思うこと
それは受験。
勉強なんて嫌だって言いながら
今思うと勉強をもっとしておけばよかったなんて
後悔をする。

懐かしく過去を思うことは大切。
でもだからって過去は変えられない。
変えちゃいけないもの。
なぜならそれは今の自分をかえてしまうことだから。

10/29/2023, 2:05:56 PM

テーマ:もう一つの物語 #349

私には私の物語があって。
あなたにはあなたの物語がある。
人生は自分が主人公の小説と言っても過言ではない。
自分が行動すれば物語が動く。
逆に何もしなければ物語は進まない。
自分が悪役になるかならないかは、
自分次第なのだ。

あなたには、もう一つの物語がある。
それは他の人の物語の登場人物としての役割だ。
この世界において
いらない人なんて誰一人としていない。
いないほうがいい人なんて誰一人としていない。
なぜならあなたは生まれてきた瞬間から、
誰かの登場人物になっているのだから。

あなた一人いなかったら
今のこの時はなかったでしょう。
あなた一人いなかったら
誰の人生もが全く変わっているでしょう。
あなたはいるだけでいい。
存在しているだけで誰かに影響を与えているのだから。

10/28/2023, 2:40:12 PM

テーマ:暗がりの中で #348

暗がりの中で一つだけ
君という光を見つけた。

今回もパッとしないなぁ。
オーディション審査員として選ばれた俺は、
これからアイドルになるであろう
アイドルの卵を探していた。
しかし、全くインパクトがない。
早く時間が過ぎてほしいと思うようなものもあった。
次がやっと最後か。
そう思って目を前に向けると
そこには地味なメガネをかけた、
女子高生くらいの子が立っていた。
「エ、エントリーナンバー〇〇ビャン!!」
盛大に噛んで顔を赤くする彼女。
大丈夫か? なんか、間違った子来ていない?
会場がざわめき始める。
しかしここでその空気に飲まれず、
審査するのが審査員の仕事だ。
彼女の特技はダンスだそうだ。
「試しに踊ってみてくれる?」
俺がそう言うとビクンと肩が上がって椅子から立つと
「ヒャイ!」
そう言うと、椅子の前から少し前に踏み出す。
さて、この子はどのくらいか。
ただのドジっ子なら足がもつれてコケるだろうな。
そんなことを思いながら彼女をじっと見つめていた。
メガネを取り、それを椅子の上に乗せる。
すると途端に会場がざわめいた。
ドジをしでかしたわけじゃない。
さっきの彼女とは全く違う、
まるで何かが取り憑いたかのようにしなやかな動き。
俊敏さ。
そして表情。
思わず見惚れてしまった。
俺は咄嗟に手元にある資料を見る。
そこにはさっきまでそこにいた、
メガネの地味な子が写っている。
まるで別人だ。
踊り終わるとまたオドオドしている彼女に戻る。
シーンと静まり返った会場。
俺は拍手した。
ただ圧倒された。
この子は間違いない。
アイドルの卵。
俺は言ってしまった。
他の審査員の誰よりも早くこの台詞を。
「合格」

10/27/2023, 1:22:27 PM

テーマ:紅茶の香り #347

紅茶の香りに誘われて
昼休憩中入ったカフェは不思議な雰囲気だった。
カフェってこんなに落ち着く場所だったっけ?
そう思わせるくらいの穏やかな雰囲気。
そして優しい紅茶の香りは香りだけでなく
心までも浄化させてくれた。
いつもキリキリしながら仕事をしていると
紅茶ではなくコーヒーばかりを飲んでしまう。
それも甘くないブラックコーヒーだ。
あまり甘いものが好きじゃないのだが
ここの紅茶は程よい。
パウンドケーキを頼んだのだが
これもバターのいい香りがする。
舌触りも滑らかだ。
「気に入っていただけたでしょうか」
オーナーらしき男性が言った。
落ち着きのあるいかにも大人な男性という感じだ。
「不思議な感じがします。
 ここは会社のようなキリキリした雰囲気がない。
 焦りのようなものも
 人目を気にするようなこともない」
すると男性は言った。
「さようでございますか。
 非日常というのを感じてもらえたなら幸いです」
非日常……。
男性は微笑んでこちらを見ている。
時計を見るともうすぐ休憩時間が終わる。
日常へと戻らなければいけない。
「またのご来店をお待ちしております」
会計が終わると男性は言った。
それに頷くとドアを開ける。
カランカランと鈴の音がなる。
まるで夢から覚めたようだった。

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