狼星

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テーマ:紅茶の香り #347

紅茶の香りに誘われて
昼休憩中入ったカフェは不思議な雰囲気だった。
カフェってこんなに落ち着く場所だったっけ?
そう思わせるくらいの穏やかな雰囲気。
そして優しい紅茶の香りは香りだけでなく
心までも浄化させてくれた。
いつもキリキリしながら仕事をしていると
紅茶ではなくコーヒーばかりを飲んでしまう。
それも甘くないブラックコーヒーだ。
あまり甘いものが好きじゃないのだが
ここの紅茶は程よい。
パウンドケーキを頼んだのだが
これもバターのいい香りがする。
舌触りも滑らかだ。
「気に入っていただけたでしょうか」
オーナーらしき男性が言った。
落ち着きのあるいかにも大人な男性という感じだ。
「不思議な感じがします。
 ここは会社のようなキリキリした雰囲気がない。
 焦りのようなものも
 人目を気にするようなこともない」
すると男性は言った。
「さようでございますか。
 非日常というのを感じてもらえたなら幸いです」
非日常……。
男性は微笑んでこちらを見ている。
時計を見るともうすぐ休憩時間が終わる。
日常へと戻らなければいけない。
「またのご来店をお待ちしております」
会計が終わると男性は言った。
それに頷くとドアを開ける。
カランカランと鈴の音がなる。
まるで夢から覚めたようだった。

10/27/2023, 1:22:27 PM