テーマ:理想郷 #351
人間たちは俺たち妖怪を怖がる。
別に怖がらせたいわけじゃない。
友だちになりたいから近づくのに、
悲鳴を上げて俺たちから逃げていくんだ。
俺は人間が好きだ。
人間は俺が知らないものをたくさん知っている。
だから俺は
人間と仲良くできる世界を作りたいと言った。
そしたら仲間に笑われた。
「そんなの理想郷だ」って。
そんなのやってみないとわからないじゃないか。
そう言って怒ると仲間たちはムッとして
「じゃあ、お前、人間に逃げられたことないのかよ
悲鳴をあげられて、泣き叫ばれたことないのかよ」
そう言われて何も言い返せなかった。
俺は妖怪。
怖がられたことだって何度もある。
たしかに理想郷かもしれない。
でももしかしたら、
妖怪を受け入れてくれる人間だっているかもしれない。
そんな言葉を口には出せなかった。
なぜなら俺は、
そんな人間あったことがなかったからだ。
10/31/2023, 1:56:05 PM