狼星

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8/2/2023, 11:51:08 AM

テーマ:病室 #262

病室から見える景色はいつも変わらない。
小説だとよくあるフレーズ。
でも私はそう思わない。
もちろん、病室から出た景色を知っている人なら、
そう思うのかもしれないが、
全く変わらないなんてことはない。
毎日違う鳥や蝶たちが空を切り飛び回る。
季節が変われば、
生き物の音も
植物の色も
人の声も変わる。

今日はどうやら夏祭りみたい。
私も着物着ていきたいな。
友達と花火を見て、
射的や金魚すくいをする。
りんご飴や焼きそば、かき氷を食べる。
彼氏と肩を寄せ合って、
丘の上の誰も知らない場所で
花火を見る。

そんな青春があることを私は知らない。
今日もまたこの窓から何度目かの花火を見て、
一人で頬を濡らすのだろう。

8/1/2023, 12:01:57 PM

テーマ:明日、もし晴れたら #261

明日、もし晴れたら。
犬の散歩をしよう。
一緒に公園を走り回るんだ。
あぁ。
まだ犬を飼っていないんだった……。

7/31/2023, 11:49:35 AM

テーマ:だから、一人でいたい。 #260

「だから、一人でいたい。」
アンタが裏切らなければ、こんなことは思わなかった。
「私は、ずっと友達でいたかった。」
でも、アンタは違った。
そうなんでしょう?
私の頬に一筋の涙が伝う。
私は手首についたアンタとおそろいのミサンガを見た。
「私の願い、叶わないじゃん。」
私はミサンガを掴み……。
切ってしまいたかった。
ミサンガのように簡単に切れる縁なら。

7/30/2023, 11:22:57 AM

テーマ:澄んだ瞳 #259

澄んだ瞳で見つめられた。
いや、正確には僕を見ていたのかわからない。
でも美女が見ていたんだ。
体育の授業の時間、
不意に校舎を見たら視線があった。
こんな浮かない俺だけど見ている人がいた。
それも美女。
2階……ということは、同い年か?
同級でこんなに綺麗な子がいるなんて……。

「ねぇ、貴方。さっきの……」
昼休み面倒くさい図書館の
当番の日だということを思い出し、
カウンターで頬杖をつき、
さっき見た美女のことを思い出してぼーっとしていると
聞こえてきた凛とした声。
俺が声のする方を見るとそこには、
あの澄んだ目をした美女がいた。

7/29/2023, 2:08:53 PM

テーマ:嵐が来ようとも #258

私の彼氏はちょっと頼りない。
「う、うわぁ!」
虫を見れば声を上げ、
「む、無理〜!!」
怪談話を聞けば耳をふさぐ。
私はそんな彼氏をいつも守ってあげていた。
弱いのは優しいから。
根拠もない誰かが言った、そんな言葉を信じていた。

「嵐が来ようとも守ってやるよ」
そんな彼氏が停電して怖くて震えていたとき、
そっとそばに来て手を握ってくれた。
なれないことを口にしたから、
思わず笑ってしまった。
何だか少女漫画みたいな台詞だったからだ。
そんなときでも彼氏の手は震えていて、
「カッコ悪いなぁ」
苦笑いしている声が聞こえた。
「ううん。今のはちょっと、カッコよかった」
私は笑ってそう言うと暗闇の中ギュッと手を握られる。
「君が笑ってくれるなら、僕は……」
そういった時、パッと明かりがついた。
サッと彼氏は私から距離を取る。
「ごめん……」
両手で顔を覆う彼氏。
耳まで真っ赤だった。
私の彼氏は頼りない。
でも世界一可愛い彼氏だ。

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