狼星

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7/28/2023, 12:16:29 PM

テーマ:お祭り #257

お祭りであんなに近くで花火を見たのは、
初めてのことかもしれない。
夜の真っ暗なキャンパスに咲いた大きな花。
遅れて鳴る音は体にほどよい振動を与えてくれる。
遠くから見ていた花火が今ここにある。

7/27/2023, 11:57:51 AM

テーマ:神様が舞い降りてきて、こう言った #256

神様が舞い降りてきて、こう言った。
「この世も汚れてしまったなぁ」
と。
「犯罪も増え、便利なものが増えたゆえに悲しむものが増える。これは死の世界に来る人間が多いはずだ。」
神様はため息をついた。
「しかし、この世を作ったのはワシじゃ。最後まで見届けねばならぬ」
神様はまた、天界へ戻っていくのだった。

7/26/2023, 1:57:53 PM

テーマ:誰かのためになるならば #255

「誰かのためになるならば、この命お前に捧げてやるよ」
面白い人間だ。
ここ数百年生きていて、
こんなことを悪魔の吾が言われるなど、
初めてのことだった。
思わず口角が上がる。
「クックック」
喉が鳴る。
面白い。殺すには惜しい。
「いいだろう、人間。名をなんという」
「……ラン」
「ランか。吾は膿を気に入った」
吾はランの頬を片手で掴む。
人間の顔は柔くて力を入れれば、
すぐに潰れてしまいそうだ。
「さぁ、ラン。吾と契約しろ。
 すればその命助けてやろうぞ」


♡3300ありがとうございます!

7/25/2023, 1:13:36 PM

テーマ:鳥かご #254

「おい、新入り」
すぐ近くで声がして僕は目を覚ます。
「鳥かごなんかに入ってないで、早く脱出するぞ」
「なんで? ここにいれば食料が手に入るよ?
 安全にいられるよ?」
目の前にいるのは先代のインコ。
「馬鹿言ってんな? 
 ここにいたらな、俺たちは自由じゃねぇ」
「自由?」
「そうだ、世界っつーのはもっとデッケーんだ」
「世界?」
「おうよ。見てみろよ」
そう言って先代のインコは翼を窓の外に向ける。
そこには真っ青な空があった。
「自由があれば、あそこへ行ける」
「あれが世界?」
「まぁ、そうだ」
あれが、世界。
「でも、外の世界は怖いものだって、ここに来る前に教えてもらったよ?」
「そんなのは知らん。新入り、世界は広いんだ。
 そんな聞いただけのせまーい世界にいんのか?
 お前だって男だろ? 男はロマンだ」
「ロマン?」
僕はそう言って首を傾げる。
「そうだ。ロマンがねぇ、男は男じゃねぇ」
そうか、じゃあ、僕にもロマンがあるんだ。
「まぁ、新しいこととか知らないことが
 待っているっつーことだ。
 んで、新入り」
先代のインコがグイッと寄る。
「俺は脱出を試みるが、お前はどうする?」

7/24/2023, 12:57:09 PM

テーマ:友情 #253

友達はよく笑う。
私はその笑顔が仮面だと知っている。
彼女が教室の隅に追いやられているのを。
彼女がいじめられているのも。
私は知っている。
でも彼女に手を差し伸ばすことができない。
彼女を救うことは
私を次のターゲットされることが目に見えているから。
怖い。
辛い。
そんなの絶えられない。
でも彼女は笑顔を絶やさない。
どんなときも。

私は見ているだけ?
それは友情といえるの?
私は一歩踏み出して叫んだ。
「そんなのおかしいって!」
次のターゲットは私。
でもね、何故か怖くない。
あなたは驚いたように目を見開いていた。
遅くなってごめん。
もう大丈夫。
私は手を差し伸ばした。

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