狼星

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テーマ:鳥かご #254

「おい、新入り」
すぐ近くで声がして僕は目を覚ます。
「鳥かごなんかに入ってないで、早く脱出するぞ」
「なんで? ここにいれば食料が手に入るよ?
 安全にいられるよ?」
目の前にいるのは先代のインコ。
「馬鹿言ってんな? 
 ここにいたらな、俺たちは自由じゃねぇ」
「自由?」
「そうだ、世界っつーのはもっとデッケーんだ」
「世界?」
「おうよ。見てみろよ」
そう言って先代のインコは翼を窓の外に向ける。
そこには真っ青な空があった。
「自由があれば、あそこへ行ける」
「あれが世界?」
「まぁ、そうだ」
あれが、世界。
「でも、外の世界は怖いものだって、ここに来る前に教えてもらったよ?」
「そんなのは知らん。新入り、世界は広いんだ。
 そんな聞いただけのせまーい世界にいんのか?
 お前だって男だろ? 男はロマンだ」
「ロマン?」
僕はそう言って首を傾げる。
「そうだ。ロマンがねぇ、男は男じゃねぇ」
そうか、じゃあ、僕にもロマンがあるんだ。
「まぁ、新しいこととか知らないことが
 待っているっつーことだ。
 んで、新入り」
先代のインコがグイッと寄る。
「俺は脱出を試みるが、お前はどうする?」

7/25/2023, 1:13:36 PM