思いつかないので保留
お題「秋晴れ」
「今日まで貴様の事を、忘れた事はなかったぞ!!」
そう言って女は双剣を構え、射殺すような目で俺を捉えている。
そりゃぁそうだ、彼女にとって俺は両親の仇だからだ。
7年前に目の前で殺されたんだ、忘れたくても忘れられなかっただろう。
あれから復讐する為に随分と鍛錬したのか、顔や身体は傷だらけだ。勿体ねぇ、美人なのに。いやそんな人生にしたのは俺か。
「熱烈なアピールありがとよ、お嬢さん。一応言っとくが、俺けっこう強いぜ?」
少しだけ挑発すると、猫が獲物に飛び付くように攻撃を仕掛けてきた。おぉ怖え、一瞬ビビった。俺の愛刀が折れるかと思った。
「貴様を殺す為だけに、この7年間生きてきた!今こそ父さんと母さんの無念を晴らす!!」
烈火の如く怒る女は、手を休めることなく連撃を続ける。大層な娘だな、それだけ両親を尊敬してたんだろうな。
『--ありがとうございます…娘を襲う前に…止めてくれて…』
『あぁ……すまない…こんな事しかできねぇ俺を…恨んでくれ』
ご両親よ、安心しろ。娘は立派に育って、俺を恨みながらも今生きている。随分と逞しいぜ、女らしい楽しみを奪っちまった責任はちゃんとするさ。
「そう簡単に殺されてたまっかよ」
お題「忘れたくても忘れられない」
もう200年経つだろうか。随分と永く眠っている。
最初の私は、『ただの喋る剣』だった。鍛治師が友人の魔法師と面白がって創り出した代物だった。周りの住人からは心底気味悪がられた。
そこから気の向くままに知恵をつけ、しばらくして友であり相棒となる剣士と出会った。
共に冒険し、仲間が増えて、苦難を乗り越えて。
遂には世界を救ってしまった。
相棒の剣士は『勇者』と讃えられ、私は『伝説の剣』として語られ、人々から憧憬の目で見られるようになった。
しかし、私にとって『私』は、至って普通の喋る剣に変わりない。いくら気味悪がられても、どれだけ憧れられても、私には些末な事だ。
今はここに眠る相棒と共に、やわらかな光が溢れる森の中で、ゆるやかに時を刻んでいる。
お題「やわらかな光」
保留
お題「鋭い眼差し」
「天候、良し。風向き、良し。水面、良し。絶好の飛行日和だ!」
ゴーグル越しに空を見上げて少女は満足そうに微笑む。
鼻歌を歌いながら桟橋を歩き、愛用している白い飛行艇の操縦席へ乗り込んだ。乗った際にちゃぷ、と艇底が小さく波をたてて揺り籠のように揺れる。
手慣れた手付きでエンジンを起動すると、プロペラが激しく回転しゆっくりと艇が前へ進んでいく。凪いだ水面に白波を立て、滑るように走る。ここからが好きな瞬間だ。
段々と空へ浮き上がり、完全に水面から離れていく感覚が少女を高揚させる。目の前には真っ青な空と沸き立つ雲が一面に広がっていた。
「まだまだ。もっと高く、高く…!」
操縦桿を強く握り締め、少女を乗せた飛行艇は天高く飛ぶ。
「---わぁ…!」
飛行艇は雲の上へ到達し、下を見ると海に浮かぶ島々が小さくなっていた。さっきまで自分がいた場所も、まるで豆粒のよう。
「サイッコーーっ!」
無邪気に叫ぶ少女の笑い声が空に響いて溶けていった。
お題「高く高く」