マジック

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「今日まで貴様の事を、忘れた事はなかったぞ!!」
そう言って女は双剣を構え、射殺すような目で俺を捉えている。

そりゃぁそうだ、彼女にとって俺は両親の仇だからだ。
7年前に目の前で殺されたんだ、忘れたくても忘れられなかっただろう。
あれから復讐する為に随分と鍛錬したのか、顔や身体は傷だらけだ。勿体ねぇ、美人なのに。いやそんな人生にしたのは俺か。
「熱烈なアピールありがとよ、お嬢さん。一応言っとくが、俺けっこう強いぜ?」
少しだけ挑発すると、猫が獲物に飛び付くように攻撃を仕掛けてきた。おぉ怖え、一瞬ビビった。俺の愛刀が折れるかと思った。
「貴様を殺す為だけに、この7年間生きてきた!今こそ父さんと母さんの無念を晴らす!!」
烈火の如く怒る女は、手を休めることなく連撃を続ける。大層な娘だな、それだけ両親を尊敬してたんだろうな。

『--ありがとうございます…娘を襲う前に…止めてくれて…』
『あぁ……すまない…こんな事しかできねぇ俺を…恨んでくれ』

ご両親よ、安心しろ。娘は立派に育って、俺を恨みながらも今生きている。随分と逞しいぜ、女らしい楽しみを奪っちまった責任はちゃんとするさ。

「そう簡単に殺されてたまっかよ」



お題「忘れたくても忘れられない」

10/17/2023, 1:40:25 PM