もう200年経つだろうか。随分と永く眠っている。
最初の私は、『ただの喋る剣』だった。鍛治師が友人の魔法師と面白がって創り出した代物だった。周りの住人からは心底気味悪がられた。
そこから気の向くままに知恵をつけ、しばらくして友であり相棒となる剣士と出会った。
共に冒険し、仲間が増えて、苦難を乗り越えて。
遂には世界を救ってしまった。
相棒の剣士は『勇者』と讃えられ、私は『伝説の剣』として語られ、人々から憧憬の目で見られるようになった。
しかし、私にとって『私』は、至って普通の喋る剣に変わりない。いくら気味悪がられても、どれだけ憧れられても、私には些末な事だ。
今はここに眠る相棒と共に、やわらかな光が溢れる森の中で、ゆるやかに時を刻んでいる。
お題「やわらかな光」
10/17/2023, 4:48:00 AM