その人がどの立場にたって、どんな目でそれを見るかによって
物事なんて容易く揺れ動いてしまうものだから。
だから、この世に絶対的な正しさや美しさ、不変なるもの、
混じり気がないものなんて無いと思うけれど。
それでも、絶対的に信じたくなってしまうもの、
心の底から信じてしまうもの、
絶対に失くさないよう、大切に抱え込もうとしてしまうもの。
それが私にとっての宝物なのかもしれない。
本当に自分がおわっちゃいそうになったとき、
スマホをつけて、カメラロールをひたすらスクロールしてる。
まだ大丈夫、まだ大丈夫、
わたしは一人じゃないんだって言い聞かせながら。
力を込めて
大丈夫、大丈夫!
あとはこれまでの頑張りを発揮するだけだよ。
そう言葉をかけてもあなたは下を向いたまま。
いつもより倍の時間をかけて、靴紐を結んでいる。
この扉を開けたら、玄関を越えたら。
また新しい一日が動き出す。
それが今日はほんの少し特別な意味を持っていて、それがあなたの体に重くのしかかっているみたい。
丸くなった背中をじっと見つめながら、私は昨日までのあなたの姿を思い出す。
家に帰ってきてからも机にかじりついて、遅くまでデスクランプを照らしていたこと。
休憩したらと声をかけても、生返事しか返さないで、納得いくまでそれに向き合い続けたこと。
時にはままならない現状に、一人で涙していたこと。
全部全部、あなたの力だ。
私はすうっと息を吸い込んでから、そしてゆっくりと右手を掲げた。
パァン!
「いった! え、え!?」
もう私が出来るのは、ここまで。
これがどれだけのものになるかわからないけど、
とにかく、今持てる私の全てを注ぎ込んだ。
まだびっくりした顔をしてるあなたに、私はニカッと笑顔を向ける。
そしてもう一度、今度はそっとその背中に手を添えてから、両手をぐっと押し付けた。
力いっぱいの、祈りを込めて。
最近気付いたこと。
それは、過去に起こった「事実」は変えられないけど、その事実に対する「見方」は変えられるということ。
どうしようもない悲しみに浸ったままの過去も、
お腹の底が熱くなるような、怒りに満ちた記憶も、
頭を抱えてしまいそうになるあの日々も。
もちろん全部がきれいにとはいかないだろうけど、
それでも、苦笑いを浮かべながらでも。
今を生きる糧として、もう一度まっさらな目で見つめてみたい。
『過ぎた日を思う』
雨の色がカラフルだったら、
この憂鬱な天気にも、少しは歩み寄れるのかな。
もしそうなったらまずは透明なビニール傘を頭上に掲げて、
内側から上をそっと覗いてみたい。
色とりどりの雨粒がぽつりぽつりと天井を弾く様は、
きっときれいに違いないから。
プリズムの光を受けて歩くのも、たまには悪くないのかも。