ある

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5/1/2024, 11:38:28 AM

雨の色がカラフルだったら、
この憂鬱な天気にも、少しは歩み寄れるのかな。

もしそうなったらまずは透明なビニール傘を頭上に掲げて、
内側から上をそっと覗いてみたい。

色とりどりの雨粒がぽつりぽつりと天井を弾く様は、
きっときれいに違いないから。


プリズムの光を受けて歩くのも、たまには悪くないのかも。

5/1/2024, 9:28:02 AM

どこまでも青々と広がる大地に柔らかい日差しが降り注いでいて、
色彩豊かな花々たちは、嬉しそうにその光を抱きしめている。

目を覚ました少年の目に飛び込んできたのは、そんな光景だった。

起き上がって周りを見渡してみても、どこまでも同じ風景が続いている。
少年は、こんなにきれいな景色を見たのは、はじめてだった。

しばらく辺りを眺めた少年は、今度はすぐそばで咲いている花に顔を近づけてみる。それらはまるで、自分に笑いかけているみたいだ。
少年は胸のあたりに、じわりと何かが広がっていくのを感じた。

その正体は果たして何なのか。

それを確かめるべく、少年はそのまま花をじっと見つめた。
向こうもまた、微笑みを称えながら少年を見つめ返す。

しかし、いくら待っても花が口を開くことはなく、その正体は分からない。

少年は、花の首に手を伸ばし、それを掴んでぐっと上に引き上げる。

花は微笑みを浮かべたまま、事切れてしまった。

少年は何度もその細い首を掴んでは、ぶつりとそれを千切っていく。
一本、二本、三本。
少年の手は止まらなかった。

それに呼応するかのようにして、胸に広がる何かも止まることはなく、どんどんと少年を侵食していった。

そうして黙々と動かしていた手は、しかし。不意にピタリと動きを止めた。

少年と花の隙間を駆け抜けるようにして、風がサァッと吹き抜けたのだ。
その勢いに圧されて、少年は腕をかざしてぎゅっと目をつむる。

風が過ぎ去ったあと、少年は恐る恐るまぶたを開けてうえを見上げた。

そこには、青い鳥がその羽根をいっぱいに広げて、空に吸い込まれていく様が見えた。

少年はじっと空を見つめる。

気づけばその目からは、一筋の涙がこぼれていた。

4/8/2024, 2:25:04 PM

これからもずっと、私は言葉を書き続けていく。
不完全な自分を補うために、そして、救うために。

境界が曖昧で輪郭がぼやけたままの自分を生きるのではなく、
その存在を証明するためにもう嫌ってほど考えて考えて考えて、
泣きたくなってもペンをとってノートに向き合って、
脳汁がもう一滴も出ないくらいに言葉を絞りきって、
私という私を見せつけてやりたい。

ワンルームのベッドの上でうずくまるしかなかった自分に、
見せつけてやりたいんだ。

3/1/2024, 2:29:14 PM

たまに、本当にたまーにだけど、ふとした時に、

“いままでコツコツと貯めてきたお金を、私が今欲しいもの全てにバーっと注ぎ込んで、ぽっくりと逝ってしまいたい”

そんな風に考えてしまうことがある。

目に付いた「欲しい」を色々と我慢して、
お財布のなかで、そして見知らぬどこかで眠っている、私のお金。
もしものため、将来のためにと、
そう短くはない年月をかけて蓄えてきた、割と大事なはずのお金。

けれど、「じゃあ実際にそれを全部使ってまで、何が欲しいの?」って聞かれても、なぜだか何にもしっくりこなくて。

結局のところ、私は何かを得たいわけじゃないし、
何かに消費したところで、代わりに満たされるものはきっと何もない。

多分、単純に、自分自身を放棄してしまいたいだけなのだ。

2/12/2024, 2:11:31 PM

私はあと何回、この人とこうして話をすることが出来るのだろうか。
あと何回、この人と会うことが出来るのだろう。
あとどれくらい、同じ時間を過ごすことが出来るのだろう。

もしかしたら数十年後、あなたは老衰して、口を動かすことが難しくなってしまうかもしれない。
いつもゆっくりと頷きながら傾けてくれてた耳だって、上手く言葉をひろうことが出来なくなるかもしれない。

だから、今の内に。
後悔したくないから、きちんと私の心を伝えたい。
もっと、あなたの心と対話したい。
出来ればほんの少しでも、一緒にいたい。

けれど、何でだろうか。
そう思えば思うほど私の喉はきゅっと閉まって、何も言葉が出てこない。

ごめんなさい。もう少しだけ待っててね。

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