あの子の部屋にはいつも花が飾られていた。一輪のコスモスを花瓶に差し込みながら、ふと思い出す。凛とした背中に、慈しむような眼差し。必ず両手を花瓶に沿わせて、華奢な指でそれを包み込んでいた。美術の教科書に載ってる黄金比より、何よりも完璧な光景。私は目の前にある、まあるい花瓶をそっと指で撫でた。
10/11/2025, 12:14:04 AM