届くようで届かない距離感が
ずっともどかしかった
ずっと先を歩くあなたが
私の道だったのに
ふと途切れた道しるべ
縮まらないはずの差が
あなたが不意に歩みを止めたから
あれだけ焦がれた背中が
追いつきたかった場所が
近づいてくるのが怖くなるなんて
もう歩きたくなんてないのに
夜が明ける
薄暗い部屋で朝を見る
やっと同い歳
二十歳
月明かりの下、手紙を書いた
大好きな人、お元気ですか
大切な友人、お元気ですか
私は今、あなたがたのことを考えています
揺らぐカーテンが冷気を運び
私の手元を狂わせる
何を書くとも決めていないけど
私は今、あなたがたのことを考えています
震える文字は、やがて滲んで
インク溜りと水溜まり
お元気ですか、お元気ですか
元気なわけがないのにね
愛する方々よ、お眠りください
そろそろ雪が、降るそうです
寒いでしょうけど、寂しいでしょうけど、
私は毎日行きますよ
毎日話しに行きますよ
今日は寒くて、飲んだんです
たったひとりで、飲んだんです
本当に寂しいのは、私です
大好きな人、大切な友人
お元気ですか、お元気ですか
真冬、川で遊んでいた。
冷えた流れが指先を鈍らせる。
でも僕は構わず水をすくっていた。
すくった水に、小さな感触があった。
水は手のひらからじゃぶじゃぶとこぼれ落ちた。
まだ感触はあった。
透明、な何かだ。
この17年、本物の“透明”を見たことはなかった。
僕の知識が浅かったようだ。
世間の透明は半透明で、この透明こそが本物だった。
僕も“透明”であれば、
半透明でなければ、
この状況にはならなかった。“透明”に出会えなかった。
まるで哲学だ。
さて透明は、何なのか。
触覚だけに集中した。
触り心地は、いい。
やわらかくあたたかい。
すべすべしてふわふわしている。
指をすべらせ形をなぞる。
いやまてあたたかい?
真冬の川から拾ったのに?
これまた僕の知識は浅かったらしい。
さて形をなぞった。
これは羽根。透明な羽根。
誰の羽だろう、透明な羽根。
天使かな、天使かもしれない。
この川には天使がいる。
なんてこった、必然だったらしい。
僕は川に飛び込んだ。
真冬の川に。
でも大丈夫、あたたかい。
透明な羽根、僕のもの。
僕は暗所恐怖症だった。
目を開けてるのに見えない、情報が得られない。
その感覚がどうにも嫌で、というより怖くて。
身体中が情報を得ようと奮闘するも、
結果は逆で、他の感覚、聴覚や触覚なども混乱で消えていく。
でも何故かはわからないが、今この状況を僕は楽しんでいる。
街中が真っ暗に包まれているが、
この空間は不思議と怖くないのだ。
目の前の小さなクリスマスツリーのおかげなのか、
両隣の暖かい友人のおかげなのか。
恐怖どころか、安堵と微笑みを得た僕は、
明るくなるまで友人と飲み笑い語り合った。
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季節外れのキンモクセイ
オレンジ色のキンモクセイ
冬に咲くとは思わんよ
寒かろうに寒かろうに
マフラー貸したろ思ったけれど
触れたらはらはら散ってしもうた
雪みたいに消えてしもうた
胸の高鳴りばれたのだろか
溶けて消えてなくなった
さよならさよならキンモクセイ
さよならさよなら恋心
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キンモクセイ花言葉 : 初恋 など