最近あなたを夢に見る
いつも隣にいた、傍にいた、
大切なあなたが出てくる夢
ひとつひとつの空気感が
あなたの存在をつくるすべての要素が
愛おしくて
あなたの足音
あなたの髪
あなたの呼吸
あなたの声
私の名前を呼ぶ、声
笑いあっていた
今までなんてどうでもよくなるぐらい
大好きで大切なその一瞬
暖かい空気の中
また明日、おやすみ
と声を掛けた
あなたは
おやすみ、また明日
と返した
嬉しくて愛おしくて
起きたら
夢は覚めていた
昨日隣で眠ったあなたは
とっくの昔に長い眠りについていた
魔法が溶けた朝の4時
おはよう、愛してる
風のように過ぎ去る月日
振り返ればずっと遠くにある昨日
自分がどこにいるのかもわからないような
忙しさという渦の中に溺れてしまいそうで
必死に走りきった時間
ふいに仕事が終わって
ふいに休みが始まった
あれほど疲れていたのに
世界中の誰よりも速く走って帰った
自然に笑みがこぼれる
走って走って、階段を駆け上がり
急いで扉を開けた
“ただいま”
やわらかい空気は私を出迎え
私をそのまま飲み込んだ
束の間の休息
ずっとこのまま
届くようで届かない距離感が
ずっともどかしかった
ずっと先を歩くあなたが
私の道だったのに
ふと途切れた道しるべ
縮まらないはずの差が
あなたが不意に歩みを止めたから
あれだけ焦がれた背中が
追いつきたかった場所が
近づいてくるのが怖くなるなんて
もう歩きたくなんてないのに
夜が明ける
薄暗い部屋で朝を見る
やっと同い歳
二十歳
月明かりの下、手紙を書いた
大好きな人、お元気ですか
大切な友人、お元気ですか
私は今、あなたがたのことを考えています
揺らぐカーテンが冷気を運び
私の手元を狂わせる
何を書くとも決めていないけど
私は今、あなたがたのことを考えています
震える文字は、やがて滲んで
インク溜りと水溜まり
お元気ですか、お元気ですか
元気なわけがないのにね
愛する方々よ、お眠りください
そろそろ雪が、降るそうです
寒いでしょうけど、寂しいでしょうけど、
私は毎日行きますよ
毎日話しに行きますよ
今日は寒くて、飲んだんです
たったひとりで、飲んだんです
本当に寂しいのは、私です
大好きな人、大切な友人
お元気ですか、お元気ですか
真冬、川で遊んでいた。
冷えた流れが指先を鈍らせる。
でも僕は構わず水をすくっていた。
すくった水に、小さな感触があった。
水は手のひらからじゃぶじゃぶとこぼれ落ちた。
まだ感触はあった。
透明、な何かだ。
この17年、本物の“透明”を見たことはなかった。
僕の知識が浅かったようだ。
世間の透明は半透明で、この透明こそが本物だった。
僕も“透明”であれば、
半透明でなければ、
この状況にはならなかった。“透明”に出会えなかった。
まるで哲学だ。
さて透明は、何なのか。
触覚だけに集中した。
触り心地は、いい。
やわらかくあたたかい。
すべすべしてふわふわしている。
指をすべらせ形をなぞる。
いやまてあたたかい?
真冬の川から拾ったのに?
これまた僕の知識は浅かったらしい。
さて形をなぞった。
これは羽根。透明な羽根。
誰の羽だろう、透明な羽根。
天使かな、天使かもしれない。
この川には天使がいる。
なんてこった、必然だったらしい。
僕は川に飛び込んだ。
真冬の川に。
でも大丈夫、あたたかい。
透明な羽根、僕のもの。