ブランコは本来
足を離して乗るのが正しい
でも離せない
あまりに不安定で
あまりに高すぎる
だけど足を離さないと
待っている人に怒られる
座るならベンチに行けと
でも私はブランコが好きだから
夜中にブランコに乗る
真っ暗の中一人で
足を地面につけたまま
ゆらゆらゆらゆら
ある日あなたがここに来た
あなたは隣のブランコに座った
あなたは私を見て
なぜ足を離さないのか聞いた
私は少し考えて
怖いからだと答えた
あなたは怒らなかった
あなたはしばらく静かになって
それから煙草をくわえた
あなたも足を離さず
ゆらゆらゆらゆらしていた
私はあなたを見て
なぜ足を離さないのか聞いた
あなたは少し考えて
煙草の火が消えるからだと答えた
二人でゆらゆらゆらゆらしていた
毎夜毎夜そうしていたら
ある日あなたは
煙草を吸わなくなった
私はあなたを見て
なぜ煙草を辞めたのか聞いた
あなたは少し考えて
それからとっても考えて
少し照れくさそうに笑った
“好きな人に
煙を吸わせたくなくなったんだ”
気まぐれに見つけた静かな木
誰も知らない隠れた小道に
ひっそり優しく立っていた
綺麗な葉っぱを見つけて
こっそりそっと、声を吹き込む
“天気がいいね”
“いつ会えるかな”
しっかり包んでこぼさないように
それから優しく吹き抜ける風に
そっと乗せて送り届ける
遠い遠い、大切な人へ
毎日毎日届ける手紙
きらきらの緑の葉っぱは
きっと今頃、とあるお家の扉の前へ
遠く遠くへ、飛んでいけ
あなたは優しい
優しいから、やめろとは言わない
ただ誘うだけ
“今夜いつもの店に行くけど、来るか?”
どんなに私が悩んで
いやでいやで消えてしまいたくても
今夜、消えてしまおうと決めていても
無責任に止めるなんてしなくて
ただ、“次” をくれるだけ
そんな優しさが暖かくて
終わりよりも魅力的で
また欲望に負けて延期する
手すりにかかっていた手は
今夜、いつもの店のドアを押していた
最近あなたを夢に見る
いつも隣にいた、傍にいた、
大切なあなたが出てくる夢
ひとつひとつの空気感が
あなたの存在をつくるすべての要素が
愛おしくて
あなたの足音
あなたの髪
あなたの呼吸
あなたの声
私の名前を呼ぶ、声
笑いあっていた
今までなんてどうでもよくなるぐらい
大好きで大切なその一瞬
暖かい空気の中
また明日、おやすみ
と声を掛けた
あなたは
おやすみ、また明日
と返した
嬉しくて愛おしくて
起きたら
夢は覚めていた
昨日隣で眠ったあなたは
とっくの昔に長い眠りについていた
魔法が溶けた朝の4時
おはよう、愛してる
風のように過ぎ去る月日
振り返ればずっと遠くにある昨日
自分がどこにいるのかもわからないような
忙しさという渦の中に溺れてしまいそうで
必死に走りきった時間
ふいに仕事が終わって
ふいに休みが始まった
あれほど疲れていたのに
世界中の誰よりも速く走って帰った
自然に笑みがこぼれる
走って走って、階段を駆け上がり
急いで扉を開けた
“ただいま”
やわらかい空気は私を出迎え
私をそのまま飲み込んだ
束の間の休息
ずっとこのまま