生きる意味なんてものは
随分前から持ち合わせておらず
強いて言うなら
死ぬために生きてる、そんな程度だ
だらだらと時間が過ぎるのを待つ
時計の針が弾む音を
何時間でも聞いている
大体決まった時間になると
鍵の音と、がさがさ荷物の音と、
貴方が一斉に入ってきて
甲斐甲斐しく世話を焼いて
その時間は嫌いではなくて
その時間は針の音は聞こえない
でも、暫く、どれぐらい経ったかは知らないが、
貴方は帰ると言ってしまって
またがさがさの荷物と、鍵の音と、
それから時計の針の音がして
時計の音はいつもよりも一層鋭く聞こえて
しばらく耳を塞いで過ごす
生きる意味なんてものは
随分前から持ち合わせていないが
強いて言うなら
時計の音を聞かない、だ
ふんわりとした春の空気が
私たちをつつみこむ
花見も終わって
ほろ酔いのなか
桜道を帰った
ふと強い風が吹いて
前を歩く貴方を花吹雪がおおった
はにかみながら振り返った貴方は
どこか浮世離れして
桜に連れ去られるような気がして
酔いなんて忘れて
夢中で貴方を掴んだ
貴方はとたんにかたちを崩し
手の中には花びらが
貴方は舞い散り
酔いは覚めた
貴方は貴方は
誰そ彼
夏の青い広い空の下
何処までも続く広い海を見ながら
君の隣に腰掛けた
なんでも空の上には
天国というものがあるらしいよ
そう君は言っていた
それなら
こんなにも空が眩しいのは
君のせいか
思わず目を細めた
それでも眩しくって
結局目を逸らした
無機質な石に
もたれかかって
体重を預ける
君は今
こんなにも近いのに
あんなに遠い空に居るって?
ひとつだけ、君に願うこと
君が幸せでいること
ひとつだけ、私に願うこと
彼を幸せにすること
あなたの瞳に見つめられると
僕は深い海を連想する
ずっと深くて、飲み込まれそうで、
その掴めない感情が
なんだか 心が落ち着かなくなる
どうしてどうして あなたは
そんな美しい瞳を手に入れたのか
母君も父君もただの目なのに
いつ見てもあなたの瞳は
まっすぐ静かに、こちらを見ている
そんな瞳に、
飲み込まれる
吸い込まれる
誘い込まれる
触りたい
指があなたの頬に 手を伸ばす
気づいた時には
あなたの頬に手があって
あなたの瞳が目の前で
あっという間に食べられた。