星に願って
星というものは生まれて一度も見たことがない。
おじいちゃんに聞いたけど、昔は夜空を見上げると、空一面にお星さまがキラキラ光っていたらしい。
そして、たまに流れる星にお願いをしていたみたい。
それってなんだかロマンチックだね。
ママがお外は有毒ガスでいっぱいだから出たらダメって言う。
だから、お星さまもお月さまも、お日さまだって見たことがない。
一度でいいから見てみたいな。
おじいちゃんがいた頃みたいにたくさんのお星さまや、流れる星を見てみたいな。
そのとき私は何をお願いするだろう。
ママの持病が治りますように?
それともパパが、宇宙戦争から帰ってきますように?
それとも死んじゃったおじいちゃんに、また会えますように?
それともお友だちが、たくさんできますように?
美味しい食べ物が沢山食べれますように?
まずい固形栄養食以外食べたいもん…
うーん…叶えたいものはたくさんある。
自由になれますように?
あ、これかも
制限とかなく、色んな場所に好きにどこかへ旅したいな
肌の色とか、生まれてた場所で嫌われないところに行きたいな
隠された手紙
したためた手紙を机の引き出しを二重底にしたその奥に隠した。
それは私の元婚約者への手紙だ。
夫には絶対に見つかってはならない。
あなたに出逢ったから私は前を見て歩くことが出来るようになった。
人の目を伺い生きることがなくなった。
あなたのお陰で今の夫と出逢い、付き合って、結婚することが出来たの。
だからとても感謝しているの。
だけど、あなたの手を離れてしまってごめんなさい。
恩を仇で返すようなことをしてしまってごめんなさい。
出来ることなら、直接顔を見て感謝と謝罪をしたい。
でも、もうそれは無理なことだからせめて手紙を書きました。
私はやせ細った震える手で書いた。
これは気持ちの整理のためで本当に出すつもりも、誰かに見せるつもりも毛頭ない。
夫がこんなものを見てしまったらきっと悲しむだろう。
余命幾ばくもない私はこんなことを考えるばかりで、余る時間をこんなことに費やしていた。
バイバイ
バイバイって母はそう書き残して、私と父の元を去った。
私はまだ幼稚園生だったから、わんわんとしゃっくりあげるように泣いた。
暫く泣いてたけど、泣いても、星に願っても、幼稚園のマリア像に願っても、帰って来なかったから何も信じなくなった。
信じるものは救われるなんて嘘だ。
でも、大人になって、好きな人が出来て、その人と深い関係になって、私は救われた。
そう思ってた。
でも、その彼の実家に結婚の挨拶に行くと、彼の母は出ていった私の母だった。
彼女は彼の母でもあり、私の母(血縁上)でもあったのだ。
こんなことになるなんて……なんて運命なんだろう。
昔のドラマにありそうな話だななんて、少し現実逃避した。
私の母は彼の父(当時は独身)と浮気して、彼を身篭ったから、離婚届を出して、彼の父と結婚して彼が生まれたらしい。
こちらの生活があり、私の父や私に顔向け出来ないからと遠方に住んで、一度も会いには来なかったようだ。
どうしたら、そんな酷いことが出来るのだろう。
散々恨み言を言ったが、段々と自分が嫌な奴に思えてきて、自分の恨み言で真っ黒になって溺れそうになったからもうやめた。
結局、この一件のせいもあり、彼とは別れた。
たとえ付き合っていても、結婚や子供は厳しいからだ。
私は新しい家庭がほしかった。
婚活したけど、上手くいけなくて、だから独りでいることを決意した。
父と二人暮らしで、父には感謝している。
でも、いずれ父は死に絶え、私は一人になる。
だから、せめて自分が生きた証として何か残したかった。
私は自分の言葉を残した。
自分に起きた出来事をエッセイとしてネットに綴った。
それは段々と人に評価され、本まで出せるくらいになった。
フリーランスとして何とか食べていけるくらいにはエッセイなど、書く仕事が来るようになった。
人生色々あるけど、ようやく生きててよかったと思えた。
旅の途中
「これからどうするの?」
少女は聞いた。
「どうもしないさ、できることをやるだけさ」
「ただ、どうしたら面白くなるかは考えているよ」
それが生きるってことだからさと、旅人は淡々と答えた。
ただひとりの君へ
君は一人だけど、独りではないよ。
『わたし』がいる。
『わたし』だけが、『あなた』のことをいつでも見ている。
いつでも抱き締めるし、悲しい時は一緒に泣いてあげることも出来る。
それを忘れないで。
いつだってわたしがいることを思い出して。
悲しい時、辛い時、苦しい時、切ない時、いつだってわたしはそばにいるから。
わたしはいつだって君の笑顔を見たいと願っている。