バイバイ
バイバイって母はそう書き残して、私と父の元を去った。
私はまだ幼稚園生だったから、わんわんとしゃっくりあげるように泣いた。
暫く泣いてたけど、泣いても、星に願っても、幼稚園のマリア像に願っても、帰って来なかったから何も信じなくなった。
信じるものは救われるなんて嘘だ。
でも、大人になって、好きな人が出来て、その人と深い関係になって、私は救われた。
そう思ってた。
でも、その彼の実家に結婚の挨拶に行くと、彼の母は出ていった私の母だった。
彼女は彼の母でもあり、私の母(血縁上)でもあったのだ。
こんなことになるなんて……なんて運命なんだろう。
昔のドラマにありそうな話だななんて、少し現実逃避した。
私の母は彼の父(当時は独身)と浮気して、彼を身篭ったから、離婚届を出して、彼の父と結婚して彼が生まれたらしい。
こちらの生活があり、私の父や私に顔向け出来ないからと遠方に住んで、一度も会いには来なかったようだ。
どうしたら、そんな酷いことが出来るのだろう。
散々恨み言を言ったが、段々と自分が嫌な奴に思えてきて、自分の恨み言で真っ黒になって溺れそうになったからもうやめた。
結局、この一件のせいもあり、彼とは別れた。
たとえ付き合っていても、結婚や子供は厳しいからだ。
私は新しい家庭がほしかった。
婚活したけど、上手くいけなくて、だから独りでいることを決意した。
父と二人暮らしで、父には感謝している。
でも、いずれ父は死に絶え、私は一人になる。
だから、せめて自分が生きた証として何か残したかった。
私は自分の言葉を残した。
自分に起きた出来事をエッセイとしてネットに綴った。
それは段々と人に評価され、本まで出せるくらいになった。
フリーランスとして何とか食べていけるくらいにはエッセイなど、書く仕事が来るようになった。
人生色々あるけど、ようやく生きててよかったと思えた。
2/1/2025, 10:49:40 AM