「やっと見つけた」
そこに咲く「一輪の花」を見つけたとき、トキオは心の中で、そう呟いた。
こんな山奥に、こんなに苦労して。
これまでの思いが重なり、吸い込まれるように、その花の元に駆け寄った。
だが、なぜだろう。
その花を摘もうとしたとき、トキオには戸惑いが生まれた。
トキオは目を瞑り、立ち上がると足早に、その場を後にした。
一輪の花には、他を寄せつけない神々しさ、そして力強さがあった。
その「魔法」使いが呪文を詠唱すると、大きな火の玉が目の前に現れた。
目を閉じた魔法使いが再び何か呟くと、その火の玉がドラゴンめがけて飛んで行った。
ドラゴンは吹っ飛ばされ、驚愕の表情を浮かべている。
一瞬、敵意を見せたが、魔法使いが再び魔法の発動に向けて構えると、慌てて飛び去っていった。
「こ、これが魔法使いの力・・」
何千もの兵士が束になってかかっても、太刀打ちできなかったドラゴンを即座に追い返した「魔法」という名の人間の叡智に、その場にいた人間たちは感嘆の声をあげた。
「あっ、虹!」
それは、部活帰りの道だった。
君は、僕がさしていた傘の一歩前へ出て、満面の笑みで、現れた鮮やかな虹を見ていた。
今、思い出してみても君とみた、あの虹ほど綺麗な虹は、僕の人生で見たことがない。
ホシオは夜空を駆けつつ、眼下に広がる街を眺めていた。
ホシオの役割は、この街を見守り、困った人がいたときは、ときには寄り添い、ときには手助けすることだ。
だが、助けたことや、ホシオの存在がバレてはいけない。
ホシオは、この役割に誇りとやりがいを持ってはいるが、同じ過ちを繰り返す街の人々を見ていると、虚しくなるときもある。
拓也は教室の片隅で悶々としていた。
幼馴染の綾香がクラスで人気者の大翔と楽しそうに話している。
前は男子と言ったら、拓也くらいとしか話しができなかったのに・・
男子共も綾香の可愛さに気づき始めたようだ。
ひそかな想い。
話しかけられても、ちょっとウザそうにして、なんだったら、時には無視したりして、綾香を邪険にしていた自分に腹が立って仕方がなかった。