小説
千ゲン
「千空ちゃんまだ寝ないの?」
寝ぼけ眼を擦りながら、ぼんやりと明かりのついている方へ顔を向ける。千空ちゃんは難しそうな顔をしていたけれど、俺の声を聞くといつもの顔に戻って視線を向けてきた。
「あ゛ー…もうちょいで終わる」
「…もしかして、寝ないんじゃなくて、寝れないの…?」
「……ちげーよ。今丁度良いとこなんだわ」
そう言うと、千空ちゃんはわしわしと雑に俺の頭を撫で回す。
きっと千空ちゃんは嘘をついている。俺に心配させない為のやさしい嘘。
長い間数を数えていた千空ちゃん。一度意識を手放してしまえばおしまいで、気を休めることが出来なかった約三千七百年間。石化から開放された直後は眠りにつくことが怖かったのだと言う。もしかしたら、今も意識を飛ばす眠りは恐怖の対象なのかもしれない。
「千空ちゃん一緒に寝ようよ」
「…何言ってんだてめー」
「いいじゃんいいじゃん。ほら、おいでよ」
軽い布団を捲り手招きをすると、千空ちゃんは意外と素直に明かりを消しこちらに近づいてくる。こういう所は年相応で、とても可愛いと思う。
肩まで布団が被っている事を確認すると、俺は千空ちゃんの手を握った。
「……」
「大丈夫、明日はくるよ」
「…お見通しって訳か」
ふ、と笑った雰囲気を暗闇の中から感じ、俺もつられて笑う。
「こう見えてメンタリストだからね。明日の朝ごはん何かなー」
「明日もドイヒー作業が待ってんぞ」
「えええ!」
小さな窓から入る星の光が俺たちを薄く照らす。
明日の話をしながら、しばらく俺たちは手を繋いでいた。
ミニ小説
おばみつ
どんなものを贈ろうかしら。
料理の得意なあなたには調理器具がいいのかも。
でもでも蛇さんが好きだから置物とか?
ああどうしよう!
あなたへの贈り物を考えるだけで、こんなにも胸が踊るわ!
ふふふ。
じっとしていても仕方がないわ!
伊黒さんが好きそうな物を見に行こう!
羅針盤
こりゃまた難しいお題だこと。
関係ないけどメルカリ売れまくってとても嬉しい。
もっと売れろ!
明日に向かって歩く、でも
明日なんて来なきゃいいのに。
まぁ4月のワートリ一番くじまでは匍匐前進で頑張ってみるよ。
小説
おばみつ
ただひとりの君へ
君はよく自分の代わりは居ると言うけれど、
君はよく自分でなくても良いと言うけれど、
君は君しか居ないんだ。
俺は君が良い。君じゃなければいけないんだ。
一緒に食べるご飯が美味しいと言ってくれる君が
俺にとってどれだけの救いとなったか。
普通の青年のように過ごせることが
どれほど俺にとって幸せなことだったか。
もしも生まれ変われるならば、君をただひとりの女の子として接させてほしい。
今度こそ絶対に守るから。
今度こそ俺が君を幸せにするから。
君の代わりは誰もいない。
甘露寺蜜璃、俺が幸せにしたいと願うのは君しかいない。ただひとり、君を愛したい。
俺はまた来世でも、君と一緒にご飯を食べたい。
そう思うんだ。