#子猫
雨が降る冷たい夕方
波紋の広がる水溜まりの静けさを
ローファーがかき消していた。
雨の音が傘をつたって手に伝わる。
ローファーによって跳ねた水が足にまとわりつく。
うねる髪をかきあげて、ふと足元を見た。
淡い水色の傘が立てかけてあり
端からダンボールが覗いていた。
まさかと思いしゃがみこんでダンボールを開く。
そこには予想通りの黒いブチの子猫がいた。
私を見てミィーミィー泣く子猫は
まだ手のひらほどの大きさだった
私は子猫に手を伸ばす。
何となく思った。彼女が帰ってきた。そう思った
腕に抱き、家への道のりを歩く
家に着くと家族は子猫を歓迎してくれると思う。
何より、
彼女ーちょうど一年前に逝ってしまった愛猫
彼女はこの子猫に似ていた。
きっとこの子は、私の凍りついた
心を溶かしてくれる。
願いを振り絞って私は1歩1歩歩いた
#意味の無いこと
今まで私にとって意味の無いことは、
ほかの友達にとっては意味のあることだった
小さい頃からなんの努力をしなくても
ほとんどできるようになった。
なんの努力をしなくても、
モデル並みの容姿を手に入れていた。
ある一つのことを除いて全て出来ていた。
私は到底理解できないことを、
仲間はずれにされないように
一生懸命分かる"ふり"をしていた。
なぜ勉強をわざわざしているの?
何もしなくてもテストで
10位以内を取れるのは当たり前じゃないの?
なぜ厚塗りメイクするの?
パウダーするだけで充分じゃないの?
なぜダイエットするの?
何もしなくても、シンデレラ体重は当たり前
それが私だった
ねぇ、ねぇ。
どうして"ホントウのこと"言ったら
自慢って言われるの?
教えてよ…誰か教えてっ……
何をしなくてもなんでも出来る私の
唯一出来ないことは……
素の私でいても人に嫌われないことだ。
#もう一つの物語
これはおとぎ話の知られざるもう一つの物語
プリンセスたちは
本当に正義のヒロインなのか
おとぎ話のヴィランたちは
本当に悪の気持ちしかないのか
白雪姫の継母は
本当に白雪姫を愛することは出来なかったのか
ヘンゼルとグレーテルは
母親を追い出すために置いていかれたのではないか
シンデレラは
熱い靴を履かせて継母を踊らせた時何を思ったのか
マレフィセントは
過去に何があってあんなにも真実の愛を信じれなくなったのか
考えれば考えるほど分からなくなってゆく
あなたは何を考えますか
プリンセスの微笑み
ヴィランの悪の言葉
その裏に隠された本当の物語を
#衣替え
衣替えでたくさんのお洋服と共に出てくる思い出
肩出しワンピース
アナタと一緒に映画見に行った時の服
2人とも大好きなアニメの最新作
ドキドキハラハラの展開にワクワクしたね
ポップコーン2人で1緒に食べて
手が触れ合った時の赤い顔。
アナタは、暗くても分かるくらい真っ赤だった
私も多分負けないくらい真っ赤だったと思うけど
白のオーバーサイズのTシャツ
アナタと勉強会した時に着た服
LINEで分からないところ聞いただけなのに
「今度一緒に勉強しよ」
って言ってくれて嬉しかった
しかもあなたの家でなんて
心が舞い上がりそうだった
白い蝶々の浴衣
アナタと花火大会に行った時の服
浴衣で会うのは初めてで
アナタの甚平姿はやっぱりかっこよくて
りんご飴食べながら花火見てた時
アナタがこっそり私の写真を撮ったの覚えてる
黒のカーゴパンツ
アナタと遊園地行った時の服
2人で韓国風って言うテーマを決めて……
アナタはどんな服で来るかなって
考えるのが楽しかった
ぶかぶかのデニムパンツ
アナタと本屋さんに行った時の服
おすすめの参考書を教えてくれて…
夏休み中参考書を理由に
何度も勉強を教えてもらったね
どれもアナタとの思い出ばかり
1枚1枚見る度に鮮やかに思い出が蘇る。
冬服はまだ何も
アナタとの思い出は刻まれていない
今度はこの服をアナタとの思い出ばかりにして
半年後
思い出いっぱいでまたね出来たらいいな
それまで夏の思い出いっぱいのお洋服
またね
#海へ
あの海に行こう
彼女との想い出がいっぱいの
彼女は声と引替えにまで私に会いに来てくれた
海で溺れた時も助けてくれた
今でも彼女の、海月のようなふわふわとした
歌声が、今でも耳に残っている
彼女の柔らかな
水色とサーモンピンクのグラデーションの髪
彼女の優しそうな
銀色の瞳
彼女の可愛らしい微笑みも
あぁ、会いに行こう…
彼女が泡になってしまった海へ
彼女の元へ
彼女の名は…
人魚姫