#さよならを言う前に
私はこれから二度と君に会うことは、出来ない
会いたくても会えない場所に行くから…
でも、さよならを言う前に1度だけギュってしてくれない?
それか、頭を撫でてくれない?
「今までありがとう、大好きだよ」
って。
「今まで頑張ったね」
でもいい…
それが無理なら、額にキスをするだけでもいい。
私も最後のあいさつは、しっかりするから
お願い…
彼女は、目でそう訴えてきた気がした。
私は、精一杯の感謝と愛を伝えた。
彼女が望むとおりに…
最後に額にキスをした時。彼女は、笑って一言の別れの挨拶をしてくれた。
ワンッ!
そうして私に15年間付き添ってくれた愛犬は、
帰らぬ旅へと出発した。
#病室
毎日見るのは、白い壁、白い天井、温かみのない蛍光灯。
そして、時々買ってきてもらえる本達。
わたしは、この白い部屋から出られない。
そう知っていた。
だけど、部屋から出たいと毎日願っていた
ある日、願いが届き、手術を重ね出ることが出来た。
あとから聞いた話だと、毎日無理をしなかったから出ることが出来たそう。
もし少しでも無理をしたら帰らぬ人となっていたかもと思うと少しゾッとした。
そんなわたしは、今恋をして婚約して、今日が結婚式。
小さい頃のわたし!今頑張れば、こんな素敵な未来が待ってる!がんばって!
そんな私の願いを届けるかのように白いハトが
わたしの上を軽やかに飛び去った。
#お祭り
なれない浴衣を着て…
いっぱい練習した髪型結んで…
私は、今、君に会いに行く
夏休みが始まって1週間。
毎日君のLINEを待っていた。
ぼーっと眺めていると君からのLINE。
たった一言の「今何してる?」
そして、お祭りの誘い
舞い上がりそうだった。足がふわふわしてる…
一生懸命君の好きそうなメイク、髪型…たくさん練習した。
そして今日、君は私を見て
「綺麗だね」
って言ってくれた…
最後の花火の打ち上げ。ラストの大きな花火の前で私は、言った
「君が好き」
君の顔は、花火が黄色なのに負けないくらい真っ赤だった
#神様が舞い降りてきてこう言った
「君は、あと半年しか生きられない」
ある春の下旬、神様が舞い降りてきてこう言った。
その日は、やっと片想い中の彼と付き合うことが出来た日だった。
なぜ?私がなにか悪いことをしたの?
でも未来は、変えられない。
私は、半年という長いようで短い時間を精一杯楽しんだ。
でも時々、刻一刻と迫る死に胸が押しつぶされそうだった。
これからもっと楽しいことをしよう!そう決めていたのに。
思い出は、増えていった。
彼との初デート。友達と勉強会、テスト後の打ち上げ、夏休みなになりクラスのみんなでプール、花火大会、水族館デート、また勉強会…
半年がすぎた。
神様がまた舞い降りてきて言った。
「お別れの時間だ。」
私は、ベッドの上で目を開く。周りには、たくさんの友達、家族、そして彼。
泣かないで?またきっと、きっと会えるから…
だから、だから…
「またね…」
最後に満面の笑顔を浮かべて、目を閉じる。
みんな、またね。またきっと会えるよ…
私がいなくてもまた明日から、頑張れるから
また、来世で会えたら…
私は、いえなかった言葉を、闇に溶ける前に呟く。
彼に聞こえるかは、分からないけど…聞こえたなら
「また、来世で会えたら…君の恋人にもう一度なってもいいですか?…」
聞こえたならでいい…でもどうか神様、私の願いを叶えてください…
闇に意識を溶かす時、彼の大好きな声で
「もちろん…」
と聞こえた気がした。
#耳を澄ますと
耳を澄ますと、私の心の鳴き声が聞こえてくる……
それが嫌だから私は、いつも音楽を聴いている
君は、そんな私のイヤホンをとって
私の心の鳴き声を聞かせてきた
でも、心の鳴き声を無視したから、
もっと泣いていたんだ
君は、そのことを知っていたんだ
だから私を鳴き声から解放しようとしたんだよね
ありがとう
そのおかげで、
今は、耳をすましても鳴き声は聞こえなくなったよ
もう。このイヤホンは、いらない
私は、欄干の上で、イヤホンを投げ捨てた