どんなに素人から始めても、一万時間さえ積めば誰でもプロフェッショナルになれる、という法則をご存知であろうか。
ある日先生から教わったその言葉に、本当に嫌気が差したのを覚えている。誰が好き好んで一万時間もひとつのことに注げるか、と。いくら好きなことでも、限度というのは必ずあるものだ。
私は、好きなことがよく分からない。上を見れば、同年代でも、どれにおいても、優れた人はごまんといる。
無謀ではないか。
そうやって諦めて何にも興味の食指を付けずに引いては譲ったふりで、傷つかないようにツルツルで空白だらけの心のまま。
そんな私でさえ、もがいてきた人生の軌跡はあるものだ。譲れないものが、ひとつ以上心に根付いては花を開いて自生して、それを育んだり、ときには引っこ抜こうと苦しんだり、傷つけては光に向かって伸びていく花の成長を感じたり。
そんな苦労を経験してきた花だけを、私は信じている。だから、まだまだ未熟な萌芽を、静かに根っこから優しく覆ってあげる。
心根は綿あめとマシュマロだけ、みたいなあたたかくてフワフワしてる、私だけのあまあまな世界なんだからね。
自分は哲学的思考がすきな、いち一般人。
(編集中……)
愛おしくて、いやに苦しい。
この気持ちの所在は、きっと僕にしか分からない………………なら、どれだけましだっただろう。
《あいつの一番になりたい》
そう思った輩が、男女問わず数多いることを僕は知っている。深淵深くから星が瞬いているかのような、人を魅了する妙な輝きを持った瞳と長く生え揃った睫毛。凛々しい眉毛の様子とは裏腹に、薄ピンク色に染まった唇から発せられる、おちゃらけた発言と柔らかい笑い声。身長はあまりないけれど、そこらの屈強な男共より頼りになるその中身。
その全てに、人として惚れてしまうのだ。
「……、3年間ありがとね」
ただ廊下ですれ違っただけで、照れたように頬を朱色に染め、そう話しかけてくれた。
――あくまでただのいち同級生に、なんて返せばいいのだろう。そう考えているうちに、「じゃ」なんて言って、去っていってしまう。
このまま別れるのは良くないと思っている。けれど、別にどうしたい訳でもない。
「あ…………」
ぐんぐん教室に向かっていく後ろ姿に、どうすることもできず伸ばしかけた手をポッケにしまって、僕はひとつの未来の可能性を潰した。
この経験があったからだろうか。
人を性別で判断しないようになったのは。
終
♡ もう二度と
最後まで自分に信じれる価値を持たせること
それは、誰も知らない御伽噺。
君が脇役で、僕が主役。
だれも見ないのに、必死になって何がしたいんだろうか。
それでも、めげず、真っ直ぐな瞳で演じ切る。
こんなに脇見してしまう僕は、主役の座には似合わない。