絡めた小指の感触を憶えている限り、その約束は永遠に。
【約束】
ひらり、と視界を横切ったのは。
一匹の蝶。
のような君だった。
初めて見たのに、なんだか懐かしい感じがして。
操られるように、君の後ろ姿を追った。
【ひらり】
あら、お客さん?
どうぞ、ゆっくり見ていって。
あら、お客さん?
違うの?冷やかしはごめんよ。
あら、お客さん?
違うの?匿って欲しい?仕方ないわね…
あら、お客さん?
…違うようね。
ん?そんな子、見てないわ。帰ってちょうだい。
…もう大丈夫よ。
あんなやつらに追われてるなんて、一体何をしたの?
ふーん、とんでもないことしたわね。そんな小さな体で。
動じないのかって?まあ、もっと酷いものを見たことがあるからかしらね。
とりあえず、あなたはしばらくここにいなさい。
外に出てもまた追われるだけよ。
…あら、お客さん?
違うの?
冷やかしでも、人を探して訪ねてきたわけでもない?
へえ、じゃああなたは一体、
【誰かしら?】
「はい、これ」
と、何でもないようにアイツから渡されたのは、一本の花。
濃い紫色の、これは何の花だろうか。
この花の理由を聞いたら、「この色、お前にぴったりだろ?」という、アイツらしい単純な答えが返ってきた。
とりあえず礼と共に受け取り、家で調べてみた。
花について調べると、必ずと言っていいほど花言葉に関する情報も目にする。
まあアイツは花言葉なんて気にしちゃいないだろうが、念のため、念のためと言い聞かせて調べた。
花言葉というのは複雑で、その花全体の花言葉もあれば、色や本数によっても違う花言葉がついてくる。
そういうとき、どれを取ればいいのか分からないが、もしこの花で、全体の花言葉を取るなら…
なんだか、満更でもない、むず痒いような気持ちが、芽吹いた。
【芽吹きのとき】
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モチーフとなった花はアネモネです。
アイツの手料理を初めて食べたあの日。
あまりに優しくて、温かくて、途中から泣きながら食べたのをよく覚えている。
【あの日の温もり】