「そういえば、最近『好きな人』に書いた手紙のこと聞かんけど、できたん?」
「ああ~あれね、出来悪すぎて燃やしちゃった」
「また?もう4回目じゃん。いい加減直接言いなよ、誰かは知らんけど」
「えぇ~それはちょっと、恥ずかしいじゃん?」
「…ホントに分からんヤツだね、お前」
「そうやって呆れててもなんだかんだ付き合ってくれるから大好き」
「さいですか」
「…」
「……」
「………あは」
「うん?」
「…意外と、直接言えるもんだね、これ」
「………………え」
【手紙の行方】
美しいから輝くのか、輝くから美しいのか。
自分には分からない。どちらでもいい。
今日もあなたは美しく輝いているから。
【輝き】
屋上の風が肌寒くなってきて、目が覚めた。
どれくらい寝ていたんだろうとスマホを取り出す。すでに結構な時間が過ぎていた。
起きたくねえな、と寝返りを打つと、
すぐ目の前に、作り物かと思うほど綺麗な顔があった。
心臓が跳ねる。息が止まる。
一瞬で、目を奪われた。
眉一つ動かない寝顔。
自分が大好きな人間の寝顔。
ただひたすらに、美しかった。
まるで、その時点だけを切り取った芸術作品のように。
このまま、時間が止まればいいと思った。
直後に我に返り、頭を冷やそうと反対側に寝返りを打つ。
けれどしばらくの後、もう一度元の位置に戻る。
そして、一人占めをするように、その寝顔を自分の胸に寄せた。
【時間よ止まれ】
あんなに静かだった家に、お前の声が響くようになった。
それだけで、こんなにやかましく、幸せな日々を送れるなら、もっと早く一緒に住んでいればよかった。
と、思ったり思わなかったり。
【君の声がする】
_______
お題【静かな夜明け】の後日談のようなもの。
できなかったら罵倒され、できても当たり前のことのように扱われる。
称賛、感謝。そんなもの一度も受けたことない。
そんな人生だった。
だからあの時、
「ありがとう」
そう言って笑んだ君が、余計に眩しく見えたんだろう。
【ありがとう】