美しいから輝くのか、輝くから美しいのか。
自分には分からない。どちらでもいい。
今日もあなたは美しく輝いているから。
【輝き】
屋上の風が肌寒くなってきて、目が覚めた。
どれくらい寝ていたんだろうとスマホを取り出す。すでに結構な時間が過ぎていた。
起きたくねえな、と寝返りを打つと、
すぐ目の前に、作り物かと思うほど綺麗な顔があった。
心臓が跳ねる。息が止まる。
一瞬で、目を奪われた。
眉一つ動かない寝顔。
自分が大好きな人間の寝顔。
ただひたすらに、美しかった。
まるで、その時点だけを切り取った芸術作品のように。
このまま、時間が止まればいいと思った。
直後に我に返り、頭を冷やそうと反対側に寝返りを打つ。
けれどしばらくの後、もう一度元の位置に戻る。
そして、一人占めをするように、その寝顔を自分の胸に寄せた。
【時間よ止まれ】
あんなに静かだった家に、お前の声が響くようになった。
それだけで、こんなにやかましく、幸せな日々を送れるなら、もっと早く一緒に住んでいればよかった。
と、思ったり思わなかったり。
【君の声がする】
_______
お題【静かな夜明け】の後日談のようなもの。
できなかったら罵倒され、できても当たり前のことのように扱われる。
称賛、感謝。そんなもの一度も受けたことない。
そんな人生だった。
だからあの時、
「ありがとう」
そう言って笑んだ君が、余計に眩しく見えたんだろう。
【ありがとう】
蚊の鳴くような声でこぼされた想い。
震える声が空気に溶け、しばらく。
お互い、何も言わず、何も言えず。
二人並んで、向こうを眺めていた。
きっと、振られると思っているんだろう。
さっきからずっと暗い顔をしている。
ごめん。
本当は、ありきたりな返事をしたくなくて、言葉に詰まっているだけなんだ。
お前の気持ちを受け入れる準備はとっくにできているから安心してほしい。
それが少しでも伝わるようにと、さりげなく手を繋いでみた。
【そっと伝えたい】