今日は、いつもより少し早く起きてみた。
カーテンを開けて、外の景色を見る。
暗い空の下、ぽつぽつとつく建物の明かり。
それらを線で繋いでみたりしながら、しばらく眺めていた。
視界の横のほうから光が差してきた。
「夜明け」の文字が漠然と頭に浮かぶ。
太陽の光は音もなく、夜の色を食べていく。
その景色を見ながら、これも今日で最後か、と呟いた。
不満な訳じゃない。むしろある種の楽しみさえあった。
今日は、最高にうるさくて最高に愛おしい相棒が、この家に入る日だから。
これからきっと、この家も、自分の心も、毎日うるさくなるだろう。
そうなることをどこか心待ちにしながら、最後の静かな夜明けを堪能した。
【静かな夜明け】
「おいで」
そう言って、自分のためだけに空けてくれるその場所。
そこに飛び込んだ瞬間、二人の心はつながる。
【heart to heart】
_______
人肌っていいですよね。
手紙を書いた。
いわゆるラブレターと言われるもの。
なけなしの語彙力で、気持ちを伝える文を綴ってみた。
何度も推敲を重ねる。
突然吐き気が襲い、口を塞ぐ。
気持ち悪いと思ってしまった。あの人に告白する自分が。
好きなのに。
いや、好きだからこそじゃないか?
好きだから、離れていってほしくない。
でも告白したら、離れていくかもしれない。
離れていかなかったとしても、恋人として一緒にいる自分が想像できない。想像したくない。
それならいっそ、しないほうがいいじゃないか。
でも、告白しなかったら、誰かに取られるかもしれない。
それは嫌だ。自分が一番近くにいたい。
でも、でも、でも。
ぐるぐると思考が巡る。
脳味噌まで気持ち悪くなってきた。
しばらくの後。
結論がでないまま、手紙だけを粉々にした。
【隠された手紙】
消えるみたいだから、お別れを言いに来た。
突然でびっくりするよね、わかる。私が一番驚いてる。
でも、なんか、不思議と怖くな んだ。
っと、 うなる前に君に出会えたからだね。
ありがとう。今ま 、すごku幸せだ た。
君を残 てい は寂しiけど、元気で 。
そ ろ時 nnみた だね。
最goにこれ 言 せて。
あiしてr 。
。
【バイバイ】
______
最期の声、届いたよ。
人生という旅の途中で出逢った、大切な人。
孤独を決め込んでいた自分の心の中に、初めて入ることを許した人だった。
長いこと、二人で旅をした。
名前のつかない関係のまま、ただ旅をした。
そうした中で芽生えたのは、愛だった。
世話をせずとも勝手に育っていった愛は、あっという間に抱えきれないほどの大きさになった。
そのかけらをそっと差し出すと、その人は「一生大事にするね」と言って、心の真ん中に飾ってくれた。
その日から、二人だけの旅路は、どこまでも続くものになった。
【旅の途中】