数少ない、自分の声を好いてくれる人のために。
私は今日も、部屋の片隅で録る。
【部屋の片隅で】
なにもない、白い空間。
隣には、自分が片想いしている人。
夢にまでみた状況が、現実に。
顔を、上げてみれば、「○○しないと出られない部屋」という言葉…
などあるはずがなく。
ただ本当に、なにもない、二人だけの空間だった。
まあ、出られなくても、ずっと好きな人といられるから、これはこれでいいか…
という、夢を見た。
【夢と現実】
日常、別れ際に「さようなら」と言わないでほしい。
言うなら、今生の別れの時に。
【さよならは言わないで】
言動の節々から、距離を感じる。
それがなんだか悔しくて自分から距離を詰めているが、その分だけまた離される。
それを気にしない、気づいていない振りをしながら、心の奥ではいつも、届かないな、と思っていた。
本当はずっとずっと、誰よりも近くにいたというのに。
【距離】
もう長いこと、耳元で鼻をすする音としゃくりあげる声が聞こえる。
いつか振りの再会。
自分に非があるから仕方ないのだが、会ったとたんに一発殴られた。そのあとぼろぼろ涙をこぼすその男に息ができないほど強く抱き締められ、そこからずっとこのままだ。
どうにかして泣き止ませようとひたすら背中を撫でているが、なかなか落ち着かない。
「そんなに会いたかったのか?」と茶化し気味に聞いたら、「会いたかった」と蚊の鳴くような声で至極真剣に返された。
それから、「次離れたら、絶対許さない」とも。
その一言で悟った。離れていた間、いや、それ以前からこの男が抱えていた想いの丈を。
それは一人で溜め込み続けるには大きすぎたことも。
決めた。
もう離れない。
もう俺のせいで苦しい思いをさせたりしない。
それを伝えると、さらに嗚咽が激しくなってしまった。
俺はこいつを泣き止ませるためにも、自分の決意をちゃんとこいつに証明するためにも、また背中を撫で続けるしかなかった。
【泣かないで】
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一緒にいるのが当たり前だからこそ、気づかない気持ちもある。