友達に向けるようなものではない目を、友達から向けられている。
そして、友達自身は無自覚であろうその視線を、満更でもない気持ちで受け止めている自分がいる。
僕たちはもう、友達のままではいられないかもしれない。
【友達】
「行かないで」
そう言って引き止めていれば、アイツは死ななかったのかな。
【行かないで】
声が枯れるまで、君の名前を呼び続けたい。
声が枯れるまで、君への想いを語りたい。
届かないことは分かっている。
けれど、万が一、何かの奇跡か偶然で、君がそれに気づいてくれたなら、
その時の自分は世界一の幸せ者になるだろう。
【声が枯れるまで】
いつも、どこかですれ違う人がいる。
初めは気にも留めていなかったが、あまりに色々なところですれ違うものだから、次第に気になるようになってしまった。
あ、あの人だ。すれ違う瞬間、思わず目で追う。
今日はなんだか、雰囲気が違う。
表情が暗い。
何があったんだろう。
話しかけようか。
けれど、相手にとっては見ず知らずの人間であるはずの自分が、いきなり話しかけに行ってもいいものだろうか。
そうして迷っている間にも、その人はとぼとぼと歩いていく。
やっぱり、心配だ。
気づけば呼び止めていた。それも少々気色の悪い言葉で。
「あのっ、自分、いつもすれ違ってる者なんですが…」
しまった、と思ったときには遅く。
しかし相手は、その疲れた顔に精一杯の微笑みを浮かべて、
「はい、知ってますよ。何かご用でしょうか?」
と答えてくれた。
嬉しさと心配が混じって、その日はお互いの気が済むまで話をして別れた。
その後、互いが特別な存在になるなんて、その時の自分は考えもしなかった。
【すれ違い】
腕を組み、鋭い眼差しで彼が見据えるは、通販で取り寄せた高級プリンの最後の一つ。
男は、神々しく光を放つ(ように見えている)それを今日食べるか、明日まで取っておくかを、極めて真剣に悩んでいた。
【鋭い眼差し】
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結局、その日のうちに食べてしまいましたとさ。